感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
noémi
2
20年から大戦終結まで仏社交界に名を轟かせた一人の日本人がいた。バロン・サツマこと薩摩治郎八。滞仏していた30年間に六百億円を蕩尽。スケールのでかい快男児だったのか、ただの成金のキワモノだったのか。本を読み終わっただけでは、にわかに判断できない。同じ時代にパリに住み、極めて切っ先鋭い刃物のような印象を与える岡本太郎に較べると、治郎八の生き方はいかにも前時代的で鈍い感じがまぬがれえない。ただ、功罪の功のほうだけを挙げるとすれば、巨額のお金を投じたお蔭で大輪の花を開くことができた日本人が多くいたということだ。2011/11/02
しろ
1
日経新聞連載の瀬戸内寂聴のエッセイを読んだ直後に図書館で見かけて読みました。大金持ちのぼんぼんが金にあかせて道楽しまくりました、ということなんだけど、これだけのスケールとなるとそれもいいか、という感じになってくる。30年間で使った金が600億円とは。言葉がでません。2010/01/31
SG1
0
薩摩治郎八のような文化・芸術のパトロンの功績は容易に測りがたい。 しかしサツマ会館=パリ大学日本館にて岡潔と中谷喜宇次郎の友情がはぐくまれ、放浪記の林芙美子の道ならぬ恋が展開したと知り、初めて分かったような気がした。 治郎八が軽やかに無責任に貴族的なライフスタイルを追い求める周辺で、たくさんの人間に決定的な影響を与えたのだ。 類書に比べ治郎八への敬意が感じられる記述に好感。貴族・金持ちは西洋人コンプレックスと無縁であり、古い時代においてもやたら語学ができることも初めて知った。2017/07/01
夢仙人
0
家産を使い尽くし、日仏関係を改善し、日本人美術家の滞仏期間中の大スポンサーとして支援したこんな男が昭和初期から戦中にいたことに驚く。すがすがしさを感じる。2010/04/18
アヴィ
0
日本人が好む無一文からのサクセスストーリーとは極北にある逆サクセスストーリー。資産家に生まれた身分を最大限に活かし使い尽くした金額は600億。もちろん全てが無駄に使われたわけではなく、当時のヨーロッパで修行時代を送っていた日本人アーティストの生活の支えになっていたり、その後の歴史において大きな偉業となっている。晩年は日本の地方都市で最後まで支えてくれた女性との清貧な生活で何も残さず逝ったというのもある意味ではあっぱれな生き方2025/05/20
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- 和書
- 念仏偈文集 〈第1集〉