感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
134
上巻の面白さが逓減していく…。ヴァレリーとベットがいかに騙していくかに専念して攻撃し続ける。が、実際にはありえないし、ヴァレリーのような女でも男を手玉に取ることについて常勝とは言えず、どんな勝ちにも付随する負けがあるのだからと、読み手のこちらが冷静になってしまうと、楽しくなくなって、「ええい、この人達はどうにでもなれ!」という気分に。そして、全てをひっくり返すきっかけを作ったあの人は誰なのか、ものすごく気になる。2018/02/28
syaori
75
下巻では、ベットのアドリーヌへの嫉妬、自分を愛していないと知りながらそれを信じられず財産どころか国庫の金まで女に蕩尽し破滅してゆくユロ男爵のほか、男爵の愛人ヴァレリーの尽きせぬ金銭への執着、失踪した夫のために自分の家にまで来たアドリーヌへのジョゼファの崇敬と恭謙というように「贅沢と貧困、悪徳と廉直、満たされぬ欲望とたえまない誘惑が」混ざり合ってドラマが展開してゆきます。嫉妬や野心、偽善や虚栄をてこに人間の醜怪さ愚劣さ滑稽さ真の偉大さを描く「人間喜劇」を堪能できる、”晩年の傑作”の名にふさわしい一作でした。2025/07/10
syota
31
うーん、そうだったのか。この小説の主役は、まぬけな男どもを踏み台にのし上がっていく悪女達でも、夫の帰りをひたすら待ち続ける貞淑な妻でもなかった。騙されても裏切られても懲りずに女に入れあげ、地位も名誉も財産も全て失いながら、それでもめげずに次の女を追いかける、稀代の放蕩親父が主役だったのだ。女好きもここまで徹底すると、むしろあっぱれ。悪女達の非道な振る舞いに嫌悪感を抱く読者を、勧善懲悪の大団円で満足させつつ、最終章であっといわせて放蕩讃歌を歌い上げる作者の手腕は水際立っている。[G1000]2016/04/16
みつ
25
下巻に到っても基本的な物語の構造は上巻を引き継ぎ、終わり近くまで大きな転換は訪れない。男たちは(印象の薄いユロ男爵の息子を除き)相変わらず愚かなまでにヴァレリーに首ったけであるが、彼女を得ようとする手段が常に金銭であるのがいかにもバルザックらしい。ヴァレリーと同居生活を送りながら男爵家にも近づくベットの策略家ぶりも際立つ。進退窮まった男爵に救いの手を差し伸べたのが思わぬ人物で、そこから物語は大きく動く。いかにも怪しげな老婆が最後の幕引きをしたかと思いきや、さらに驚きの結末に。なるほどこれは「好色一代記」。2022/07/23
ラウリスタ~
13
下に入ると素晴らしく面白かった。ゾラの『ナナ』を思わせるマルネフ夫人の最期。『マクベス』の魔女みたいな「あいつを殺してあげますよ」と提案してくる謎の婆さん。ユロ男爵はパリの辺境に逃げてなお、女を囲い続ける。ベットの復讐は失敗し、彼女はマルネフ夫人へ同性愛的な友情を抱いていたことを、彼女の死の知らせで実感(娼婦同士のレズとして『ナナ』では露骨に)。あの貞淑なアドリーヌが、家族を救うために殉教者の覚悟で娼婦になる決心をし、出来もしないふしだらな化粧を試みるシーンは圧巻。金と女が区別できないまでのアマルガム。2020/04/10