内容説明
本書では、1989年を、1789年から1989年に至る時代の終わりとして見なす方がより有益である、ということを論じるつもりである。1789年から1989年に至る時代は、近代世界システムの地球的規模におけるイデオロギー―著者のいう地政文化geoculture―であるリベラリズムが、勝利しかつ崩壊した時代であり、興隆し最後には消滅した時代である。このように考えれば、1989年という年は、フランス革命のスローガンが不可避的な歴史的真実を反映しており、現在あるいは近い将来において実現されるようになると多くの人々によって考えられていた政治的・文化的時代―目を見張るような科学技術的成果のあった時代―の終わりをなす年であるといえるだろう。
目次
1 1990年代とその後―再構築可能か(冷戦と第三世界―古き良き時代なのか;平和、安定、正統性―1990年から2025/50年まで ほか)
2 リベラル・イデオロギーの構築と勝利(三つのイデオロギーか一つのイデオロギーか―近代性をめぐる似非論争;リベラリズムと国民国家の正統化―ひとつの歴史的解釈 ほか)
3 リベラルの歴史的ジレンマ(どの近代性の終焉なのか;リベラリズムの克服不可能な諸矛盾―近代世界システムの地政文化の視点から見た人権と民族の権利)
4 社会主義の死滅か、瀕死の資本主義か(転換の戦略・戦術としての革命;共産主義崩壊後のマルクス主義 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Rusty
2
1789年後保守主義・リベラリズム・社会主義(大まかに右翼・中道・左翼)のうちリベラリズムは背後に隠れつつ実質的には支配的イデオロギーであり、それに基づき選挙権の付与や少しの社会福祉、国民的統一は達成されたが、それは危険な労働者階級を飼いならすための方策となった。その限界の発露が1968年世界革命で、延長線上に冷戦終結がある、と。イラン革命、イラクのクウェート侵攻、南から北への移(難)民増大に代表される出来事は起こってきているが、弱体化への反動と見るべきなのか?国家はますます強権的になっているように思う。2015/12/28
肉欲棒太郎
1
1968年革命の世界史的な重要性を認識。アフター・リベラリズムの「暗黒時代」において、どのような反システムの闘争がありうるのか。2015/12/09