内容説明
今世紀最高の感性の歴史家、「社会史」への挑戦状。
目次
序章 普通の生活についての研究
第1章 ある生涯の空間
第2章 「底辺の無限」
第3章 親和力と親戚
第4章 文盲のことば
第5章 木靴職人と糸紡ぎの女、そして手袋つくり
第6章 話し合いの喜び
第7章 解体された過去
第8章 侵略
第9章 「貧しき者の大胆さ」
第10章 教区民、国民軍、選挙人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CCC
10
後世視点だと逆転してしまうけれど、たぶんこれが歴史の本道なのだろうなと思う。何者にもならなかった木靴職人ピナゴの伝記。ピナゴの生きた近代フランスの村の実態は伝わってきた。しかし記録の不足から推測で埋めるしかないところや、数歩、その個人には届かない領域も多かった。そこからさらに踏み込むと、おそらく文学になるのだろう。2021/04/17
袖崎いたる
7
アナール学派の泰斗として知られるお人。感性の歴史学を謳い文句にし、社会史を描くにも大雑把なストーリーを以下は描いてお仕舞いにするのではなく、個々の感性の場面をピックアップするスタンス。驚くなかれ、本書で取り上げんとする人物は何も名声を残さなかった無名の人間なのだ! 「もったいぶって個人的な痕跡を残そうとした人間たち全てに対して、非常な反感を抱いていた。」……これがメインターゲットにされている木靴職人。コルバンは名のある人物にばかり照明される歴史学に辟易していたのだな、うん。まさに知られざる歴史のロマン。2021/02/11
ヤヨネッタ
2
昔のヨーロッパ風の「平凡な村・平凡な人」を創作で描くときに役立つのでは?と手にとってみました。具体的な描写が多くて想像の助けになると思います。18世紀末から19世紀にかけてのフランスの田舎での風景、仕事、ご近所トラブル、戦争や選挙など、可能な限り細かく描写されているので読み終わった頃には木靴職人ピナゴさんが身近に感じられる程です。難しいので2回読みましたが、何度読み返しても発見が多い本だと思います。2019/07/14
めぐりね
2
ピナゴという靴職人の「記録を残さなかった人間の記録」というよりも、記録を残さなかった人間の生きたであろう世界を再構成した著作である。これまでの歴史学において、個人が登場するのはその個人が自伝などを書き残した場合、もしくは、裁判記録などに固有名詞が現れる場合のみであった。本書は、「記録を残さなかった人間」に焦点を当て、その人間が生きた世界の再構成、言い換えるならば、ピナゴが感じたかもしれないことを追体験し、彼が生きた世界を再構成したのである。2019/01/11
Arte
0
歴史家が記録を残していない男の歴史を書いてみようと思い立ち、19世紀に生きた木靴職人の男を無作為に選んで書いてみました、という本。意外にいけるもんやな、と思った。文盲なので、本人が残したものはバツ印だけ。居住環境や当時の経済状況、親戚家族構成、当時の記録(めっちゃ小さなことで近所同士争った記録とか残ってるのね)等が説明されている。2024/06/23