内容説明
ブルデューの原点。大学における形式的平等と実質的不平等の謎を科学的に解明する文化的再生産論の古典的名著。
目次
第1章 選ばれた者の選択(高等教育における不平等;出身階層の作用;勉学の傾向と階級 ほか)
第2章 まじめなゲームとまじめさのゲーム(勉学のサイクルと余暇;共有空間と学生生活;交流の不在あるいは統合の欠如 ほか)
第3章 見習いか魔法使いの弟子か?(創造性と受動性;「点取り虫」と「ディレッタント」;職業上の将来 ほか)
結論(形式的平等と実質的不平等;カリスマ的イデオロギー;本質主義による不平等の増幅 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
34
奨学金を肯定する実証的な背景が明快になるので、現実的な政策提言として有効です。ただし、思想書ではないので、どれだけ優れた内容であってもスケールの小さい話だなとという印象です。ピケティ『21世紀の資本』を連想させます。階級社会でない日本では、親の裕福さや都会と地方の出身によって格差が生まれています。格差は経済的な負担による余裕だけではなく、文化的な趣味や行動に馴染むかかが大きい、というのが本書の特徴です。スプツニ子!のようなひとをみると、感性の違いに、ああなるほど、と納得してしまいます。2019/01/31
isao_key
11
1964年にフランスで書かれた大学入学者の社会的な階層を学部別に分析している。法学部と医学部の学生は20世紀の初めには学生人口の60%以上を構成していたが、1960年代には30%以下でしかなくなった。勉強することは創造することではなく、自分を創ることである。それは文化を創造することではなく、最善の場合でも文化の創造者として、大半の場合には他人によって作られた文化に精通しているより一般的には、勉強することは生産することではなく、何かを生産できるものとして自分を生産することなのである。現在にも通じる生き方だ。2019/04/08
roughfractus02
7
アルジェリアを調査(1960)した人類学者が自国フランスを調査し、文化の伝達という共通テーマから文化資本の相続という問題を本書で立ち上げて社会学者になる(1964刊)。その際、文化はもはや人類学的文化ではなく、学校教育という相続手段を作り、学生たちにハビトゥスとして文化資本を与える上流階級の文化である。階級差を前提とする学校教育は、「まじめさ」から弾かれる者を非相続者として区分けするゆえに、不平等が生じるのは当然なのである。本書には、教育の真の民主化を構想する著者の怒りに満ちた意志を感じ取ることができる。2024/06/07
キンダニ
1
事前にブルデューに関する概説書を読み、本書の結論が大雑把に頭に入っていた状態だったので、本書を最後まで通読するのは可能だったが、細かい議論まで把握できたとは言い難い。ブルデューの著作の中では本書は読みやすいものと言われているが、それでも簡単ではないなと感じた。納得したり共感したりする箇所がいくつかあった。図表が非常に多く、それらに目を通す作業はダルかった。2020/04/09
客野
0
読みやすいのにここまで素晴らしい内容だとは。学校教育の矛盾を暴きつつ、現実的な見方も提供してくれる。読みながら要所要所で納得や共感しっぱなしであった。さらに、この本の発行は1964年、東京オリンピックと同じ年である。この中で述べられていることが、次の東京オリンピックを迎えようとしている今日に至ってなお解決されていないのはなんという皮肉だろう2016/10/13