感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
17
夢みる詩人の冒険を綴った散文詩。冒頭の「忍耐」から詩人は意識下に降り立ち死の側に属するもう一人の自分と邂逅する。だがここで死は忌避されるものでなく、詩想へ通じる小路としてある。「夢の青い破片で手首の血管を切った」瞬間、彼は幼年期とも重なる複数の夢=青を書き取っていく。深淵たる「海の夜」で〈風景〉が現実とも夢とも視える境界を意味すると悟り、「夜明けの書」では朝焼けの到来と同時に現実への回帰が示唆され、「黄色い壁」に夢の名残を見出しつつ次なる夢想の予感を抱く(「絶望が奇跡を起こす街に彼は戻ってくるだろう」)。2021/02/21
ぞしま
13
本書も素晴らしかった。 エピローグ的に(?)「問題なのは、歌になる以前の長い間われらの声が隠れ続けている括弧をひそやかに広げてやることだけではないだろうか」と書いているが、そんな詩と思う。一読した感じだと、雪の窓と、黄色い壁が好きかな。2020/09/18
いやしの本棚
11
『青の物語』のモルポワによる、ちいさな散文詩集。詩人の夢想が、夜や海、夜明けに仮託して展開され、その夢は、やはり死を内包している。人間の悲惨と希望を「青」に仮託した『青の物語』ほど完成されてはいないが、そこへと至る萌芽が感じられる。 「夜明けは止まる枝を求めて夜を徹して空に刻みつけられたとても小さな白い痣である。」42ページより2016/06/12
ふるい
9
夢みる詩人。自然と戯れ、隔絶された人。彼のことばに酔いしれる。2019/01/17