内容説明
著者は、アメリカ合衆国が内乱、経済的危機、戦争などといった非常時または非常事態に遭遇した際に、合衆国憲法にもとづいて、大統領が強大な権限を掌中に収め、この権力の行使によって、合衆国の国難と民主政治の危機とを克服してきているアメリカの政治制度に非常な関心と興味を懐いている者である。リンカーン大統領と南北戦争、ウィルソン大統領と第一次世界大戦、F.D.ルーズヴェルト大統領と経済恐慌および第二次世界大戦、ケネディー大統領とキューバ危機(戦争にはいたらなかった)、ニクソン大統領とヴェトナム戦争といった事態への対応がそれである。アメリカ合衆国が、このような非常事態に遭遇した際に、国家の安全と国民の保護を図るために、大統領(行政部)の権限と立法部(議会)および司法部(裁判所)の関係は、どのような形態になるのか、非常事態に対処するために行使される大統領の絶対な権限と民主政治の「法の支配」の原理は、どのように位置付けられるのか、などが本書で問われている課題である。
目次
第1章 リンカーン大統領と南北戦争
第2章 リンカーン大統領の指導力
第3章 リンカーン大統領の独裁力
第4章 人身保護令の特権剥奪権に関する論争の批判および評価
第5章 第一次世界大戦とウィルソン大統領
第6章 ニクソン大統領とヴェトナム戦争
第7章 非常事態とアメリカン・デモクラシー
第8章 アメリカ合衆国大統領の非常時権派生源の論拠と展開
著者等紹介
岡田皓一[オカダコウイチ]
1935年群馬県に生まれる。1965年日本大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得満期退学。現在、明星大学教授。専攻は政治理論、西洋政治思想、アメリカ政治制度
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。