内容説明
全世界を席捲した話題の映画「マトリックス」シリーズ、その裏側に隠されたメッセージを読み解く待望の論考。
目次
1 どうしてわかる?(コンピュータ、洞窟、お告げ―ネオとソクラテス;懐疑論、道徳、『マトリックス』 ほか)
2 砂漠の現実世界(『マトリックス』の形而上学;機械製の幽霊―心の哲学マトリックス風 ほか)
3 倫理と宗教の兎穴(スプーンはないんだ―仏教の鏡;『マトリックス』の宗教と多元主義の問題点 ほか)
4 バーチャルなテーマ(地下生活者の手記―ニヒリズムと『マトリックス』;苦い薬を飲む―実存的な意味での本物の自分(『マトリックス』と『嘔吐』) ほか)
5 『マトリックス』の解体(キアヌを貫いて―新しい穴と陳腐な話;マトリックスとマルクス、そして乾電池の人生 ほか)
著者等紹介
松浦俊輔[マツウラシュンスケ]
1956年生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学卒。翻訳家、名古屋工業大学助教授(科学哲学)
小野木明恵[オノキアキエ]
大阪外国語大学英語学科卒。翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙とロケットが好き
17
2003年10月初版購入。梨木香歩、テッド・チャン、ウィトゲンシュタインから触発為れての再読。もう少しで何かに届く予感。無知は幸福か、真実はどんなものであれ知るに値するか。イデアを想起する為の読書はひとつの手掛かりなのかもしれない。集合知に寄る母体、そこからの脱脚。SNSや会話ツール、ウェアラブルに寄る健康記録、これらのビックデータはマトリックスになりシンギュラリティを迎える事への布石となるのでは。2015/03/16
よく読む
8
おもしろい。映画『マトリックス』が好きな人はぜひ読むべき。おもに哲学の教授によって章ごとにわけて書かれる。ネオは問い続けるソクラテスでありイエスだ。使徒トマス、アンダーソン(人)、Neo(新しい)、One(唯一、救世主だ)。預言者はデルフォイの巫女に当たる。彼女は言葉で運命を導く。吹かすタバコや座る三脚も意味がある。プラトンの壁画も関わる。マルクス主義、デカルト。いったい自分は何なのか。この世界が現実なのか。自由意志はあるのか。わくわくするテーマ計り。この映画は非常に哲学的な要素が多い。また読み返したい。2017/02/03
よく読む
5
再読。「心の世界」と「脳の世界」は違うのか。「林檎を見ているときの脳」と同じになるよう脳に電気信号を与えれば、2つは区別がつかないのではないか。これをマリーの部屋を使い、2つの世界を同一とするのは誤りであるとする。/映画にはスプーンがないというシーンが出てくる。ないとわかると、スプーンを自在に曲げられる。これは仏教の無我の境地だ。私も何もない/恐怖を捨てると、人は自由になる。自分の命を差し出してモーフィアスを助けようとしたネオは、ついにエージェントにも対峙し、仮想空間で銃弾を止めるようになる。2017/02/09