内容説明
3000億円とは“ゼロ”が果たしていくつ並ぶのか。一万円の札束がどのくらい積み上がるのか。まずは想像上の数字である。しかし、あるひとりの人間の行為によって、その想像上の数字がどこともなく消えてしまったという現実がある。本書はその3000億円が消えてしまった住商事件を検証するものである。但し、犯罪として検証するのではなく、市場取引としての客観的な立場から検証を行おうとするものである。今回の事件に関するこれまでのほとんどの論評は、「3000億円が消えた戦後最大の犯罪」としての扱いである。そして犯罪を犯した人物像に焦点が当てられている。しかしそれが今後の日本にとっていかほどの効果があるのであろうか。3000億円という損失をし、あくまで仮定として、スイスの隠し口座等を通して裏金(リベート)がからんでいる可能性があるといった、野次馬的な見方だけで今回の事件を済まして良いのであろうか。
目次
第1章 戦後の日本と相場―戦後の日本はどうして相場に関わるようになっていったか
第2章 戦後の日本における先物相場―先物相場はなぜ日本においてタブー視されてきたのか
第3章 相場と損失―なぜ企業の相場をめぐる事件が後を絶たないのか
第4章 不正取引の土壌―なぜ住商事件は起きたのか―企業が辿った経営方針からの検証
第5章 海外の商品先物市場―今回の住商事件の舞台となったLMEとはいかなる市場なのか
第6章 相場操縦と価格操作
第7章 住商事件の検証
最終章 住商事件の結末