内容説明
猫ってサディスト?すばらしく美しい牡アンゴラを盲愛する老嬢のものがたり。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めがねまる
21
犬と人間なら人間のほうが偉いけど、猫と人間はその逆。食べて排泄して寝るだけの猫のために、食事を用意してやったりトイレを片付けたりドアを開けてやったり寝床を作ったり......。人間は猫の召使い。それを嬉々としてこなし、猫様に傅く姿は滑稽で被虐的ですらある。老嬢と猫の組み合わせは現実にもよくあるけど、終盤まで読むと、よくある話ではすまなくなる。というより自分が将来そうなっていそうで嫌だ...猫狂い恐ろしや〜2016/02/22
いやしの本棚
17
猫さまに仕える老嬢のお話とはチャーミングだな~と思って読み始めたのだけど、これはまさしく「被虐のよろこび」と「倒錯した愛」に溺れる処女(おとめ)の物語であった。行間から溢れ出すエロスと、あくまで老嬢テレーズが純潔さを失わないバランスが絶妙。2016/11/03
rinakko
13
“ムトン、わたしのかわいい猫(こ)、巨きなムトンや、おまえの修道女(シャノワネス)になりたいくらいだよ”。人に「マドモワゼル」と呼びかけさせる無垢な雰囲気の老嬢、元女中で善良なテレーズの、大きさへの愛と敬意故に巨猫ムトン氏にひたすら傅く姿。健気で滑稽で些か憐れなそれは、徐々に常軌を逸していく…。愛猫家の悲喜劇に留まらない、死と血と官能の匂いがむせるほどに充満していく展開(きな臭い中盤を引き延ばして一気に駆け上がる終盤)に、魅了され息を呑む。「仔羊の血」と「ダイアモンド」が大好きなので、この作品も堪らない!2015/09/11
ふゆきち
2
マンディアルグ最初期の小品。後の作品のような幻惑的な話ではありませんが、娼館や寝室の描写等、所々に片鱗が見て取れます。流れるような文章の翻訳もいい感じでした。2023/09/18
渡邊利道
1
マンディアルグ修業時代の習作がひょっこり出てきたという一篇。とても古典的に緊密に構成された老嬢と猫の物語で、既に充分紫衣熟した達者な語り口、後にも通じる舞台装置や小道具などの緻密な描写、動物と女性、フェティッシュと被虐のエロティシズムというモチーフなど、しっかり読ませる。こういう作品の多くを廃棄したのだとすると、それはもったいないことをしたなあ。2017/09/12