内容説明
杉山龍丸の長男の満丸さんが、父のインドでの緑化事業の軌跡を訪ねたドキュメント。福岡の郊外に四万坪の杉山農園を明治の時代にアジアの農業開発の実験場としてつくりあげた曽祖父・茂丸、その志を文学の領域で開花させようとした祖父・泰道(夢野久作)、そして、戦後、杉山農園をなげうってインドの荒廃した地に緑の木を植えつづけた父・龍丸。これは、その杉山三代にわたる壮大な夢の叙事詩である。
目次
第1部 インドへの愛(アジアはアジア人の手で;杉山農園と杉山泰道(夢野久作)
空に浮かぶ笠 ほか)
第2部 砂漠を緑に(ピラト氏への提案;大飢饉;ユーカリの奇跡 ほか)
第3部 グリーン・ファーザー(夢久庵の跡;沈黙の世界の旅;父の木 ユーカリ ほか)
著者等紹介
杉山満丸[スギヤマミツマル]
昭和31年(1956年)東京都に生まれる。2歳の時父母の郷里福岡に移る。東京農工大学農学部卒業。その後、九州大学農学部で3年間研究生として農業工学を学ぶ。設計会社等を経て、現在、九州産業大学付属九州産業高校教諭
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感想・レビュー
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ふぁるく
22
図書館。祖父に杉山茂丸、父に夢野久作を持った龍丸。彼ら三代の軌跡、中でも龍丸さんの後半生の活動であったインドの砂漠での植林について、彼の息子さんが綴っています。龍丸さんは丹念なフィールドワーク、砂漠の地中に残った水分を用いた方法などによって植林、土壌形成を行ったそうです。これはとても科学的で、またとても地道な努力を重ねたことに驚きました。無私という単語が登場しますが、まさに自らを投げうつ覚悟で砂漠に挑む彼の姿、その後のインドの方達の龍丸さんへの感謝に胸を打たれました。小学生にも読める配慮がされています。2017/04/05
スー
17
23杉山龍丸さんは私財を売りそのお金で砂漠化に苦しむインドを緑化し救った。ユーカリを大量に植林するとユーカリが地下の水を吸い上げるすると地元の人達が僅かな麦しか実らないと諦めていた土地に台湾から取り寄せた蓬莱米が実り多くの人を驚かせ喜ばした。他にも地崩れをおこし乾燥化を食い止められないと専門家が匙を投げた土地でも植林に成功している。今、日本人が世界で信用されているのは過去にこういう無私な行動をし人々を救った日本人が居たお陰です、彼等に感謝するとともに自身の行動にも気を付けて行かなければならないと思います。2021/02/09
小音
5
とても読みやすい文体の本でした。杉山さんの心と意志力を同じ日本人として誇りに思います。2012/10/02
おたきたお
2
特攻隊を生き残った、著者の父である杉山龍丸(作家夢野久作の子)は、日本政府から黙殺され、インド政府から協力を得られず、自ら立ち上げた国際協力協会にも詳細を語らず、インドでユーカリを植林し、緑地化を実現した。それらは全て現地の人々の視点で思考し、行動した。この一人の日本人の存在を、若い柔軟な頭の中に留めてもらいたい。全頁ルビ打ちで、小学生高学年でも読めるようにされており好感。2006/01/01
245
1
夢野久作の息子の話。父の杉山茂丸は「戦前のフィクサー」として出てくることが多いけど、大きな活動を政府とは関係なく自力の行動力でやろうとするところは共通なのかもしれない。香椎辺りが昔の農園だったらしいので、いつか行ってみよ。2017/07/16
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- 和書
- 50歳からの青春