内容説明
動物園で起きた謎の連続死、庭先で変死した正体不明の野生動物、かわいがっていたペットとの突然の別れ―。この子は最期に苦しみましたか?物言わぬ動物たちの声なき声を聴く獣医病理医による命のエッセイ。
目次
第1章 動物の死から学ぶ(獣医病理医は「過去」を見る;顕微鏡で見る宇宙;ペンギンも胃がん;アフリカゾウの体内に潜る;リスザルの連続死;「カンガルー病」ではなかった;謎の遺体の正体は)
第2章 「この子は最期に苦しみましたか?」(「病理解剖してよかった」;動物のおくりびと;意図せぬ虐待;「よかれと思って」生肉を;ネコは外が幸せ?;危うい友情―ネコとゴールデンハムスター;「娯楽」にされる命)
第3章 珍獣“エキゾチックアニマル”たち(腸閉塞のヒョウモントカゲモドキ;子どもを咬んだミーアキャット;「ミニ」や「マイクロ」でも…;ツシマヤマネコのロードキル;死を学ぶ子どもたち;病理解剖された動物たちは今も生きている)
著者等紹介
中村進一[ナカムラシンイチ]
獣医病理医(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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jam
66
銀河系の恒星は約2千億、人ひとりの細胞は約3兆2千億。シロナガスクジラは人の15倍あるという。獣医病理医である著者が死後の動物を病理解剖し、死因をつきとめる。動物の死も人の死も意味することに変わりはない。私たちは他の生命をいただきながら生きている。生きることの究極は、それに尽きる。動物や植物にどこまでの思考があるのかは定かではないが、彼らは摂理のままに生きて死ぬ。そして、細胞のひとつひとつがひとつの生命を構成することは、森羅万象の摂理とも違わない。物言えぬ生命のなんと愛おしいことか。物言えぬがゆえに。2024/03/03
tomtom
16
獣医病理医という職業は初めて聞いたし、動物園で死んでしまった動物も、園の獣医ではなくて専門の獣医病理医が解剖していることも初めて知った。子どもの頃からブタを飼いたいと思っていたけど、病気とかまだ分からないことも多くやっぱり簡単に飼うことは出来ないなと思ってしまった。2024/02/20
ぽけっとももんが
8
死んでしまった動物から教えてもらえること。獣医病理学医である著者はにわとりからアフリカゾウまで解剖する。頼まれればペットも解剖する。可愛がっていた飼い主が意図せずペットの寿命を縮めることもある。珍しいから、かわいいからと安易にエキゾチックアニマルを飼うことにも警鐘を鳴らす。安楽死させられたミーアキャットの話など、まずこれ読んで感想と決意表明を書いて提出して欲しいと思うよ。別の本で寿命の長いペットは「死んでも飼う」覚悟がいるとあったな。自分がいなくなったときに引き取り先まで準備しろって。2024/04/12
Metis
5
図書館本。今年の初めに愛犬を亡くした。2022年にも。どちらも決定的な死因がわからなかった。この本を読んで、解剖していたら死因が特定できたのかもしれないなぁと思ったし、愛するあの子達が何が原因で死んだのか知りたいと思った。でもあの愛おしい身体にメスが入るのかと思うとやっぱりその決断ができたのかというと難しいなと思った。内容はとてもわかりやすく、動物の死に真摯に向き合う著者の姿が非常によく現れていた。2024/04/15
おとしゃん
4
死は僕らの隣にいる。動物達の死を敬意を持って病理解剖し、その死因を探ることで、彼らにとってより良い環境を提供できないかと奮闘されているのだろうなと感じた。つい可愛さや興味、下手すればウケ狙いで買ってしまうペット。生活圏が近づき過ぎて命を落としてしまう野生動物。こうした命に対し、日々奮闘されているのだなと思う。僕が僕の生活を大きく変えることは難しいけれど、せめてこうした動物達との関係には今まで以上に敬意を持って接し、善意のつもりで死に追いやってしまうようなことは避けたいと思った。2024/02/06