内容説明
動物園で起きた謎の連続死、庭先で変死した正体不明の野生動物、かわいがっていたペットとの突然の別れ―。この子は最期に苦しみましたか?物言わぬ動物たちの声なき声を聴く獣医病理医による命のエッセイ。
目次
第1章 動物の死から学ぶ(獣医病理医は「過去」を見る;顕微鏡で見る宇宙;ペンギンも胃がん;アフリカゾウの体内に潜る;リスザルの連続死;「カンガルー病」ではなかった;謎の遺体の正体は)
第2章 「この子は最期に苦しみましたか?」(「病理解剖してよかった」;動物のおくりびと;意図せぬ虐待;「よかれと思って」生肉を;ネコは外が幸せ?;危うい友情―ネコとゴールデンハムスター;「娯楽」にされる命)
第3章 珍獣“エキゾチックアニマル”たち(腸閉塞のヒョウモントカゲモドキ;子どもを咬んだミーアキャット;「ミニ」や「マイクロ」でも…;ツシマヤマネコのロードキル;死を学ぶ子どもたち;病理解剖された動物たちは今も生きている)
著者等紹介
中村進一[ナカムラシンイチ]
獣医病理医(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
99
著者は動物の遺体から、生きていた「過去」に何が起こっていたのかを究明する獣医病理医。死んだ動物に敬意を表して死体とはいわない“なるほど!ザ・ワールド”。野生動物やペットがどのような病気にかかり、どのように死亡したのか、獣医でなければわからないことが書かれている。遺体袋を開けた瞬間にどんな動物かわかるというにおい、人間の敷いた道路による影響で野生動物が死ぬ「ロードキル」、ペット動物として日本に入ってきた40~100キロのミニブタと20~40キロのマイクロブタ、エキゾチックアニマルのことなど、→2024/12/21
jam
70
銀河系の恒星は約2千億、人ひとりの細胞は約3兆2千億。シロナガスクジラは人の15倍あるという。獣医病理医である著者が死後の動物を病理解剖し、死因をつきとめる。動物の死も人の死も意味することに変わりはない。私たちは他の生命をいただきながら生きている。生きることの究極は、それに尽きる。動物や植物にどこまでの思考があるのかは定かではないが、彼らは摂理のままに生きて死ぬ。そして、細胞のひとつひとつがひとつの生命を構成することは、森羅万象の摂理とも違わない。物言えぬ生命のなんと愛おしいことか。物言えぬがゆえに。2024/03/03
kanki
25
獣医の病理解剖。リス連続死の原因特定。捕獲性筋疾患から腎不全へ。生肉だけだと栄養偏る。動物と共に暮らすために大事な仕事だ。2024/08/13
tomtom
19
獣医病理医という職業は初めて聞いたし、動物園で死んでしまった動物も、園の獣医ではなくて専門の獣医病理医が解剖していることも初めて知った。子どもの頃からブタを飼いたいと思っていたけど、病気とかまだ分からないことも多くやっぱり簡単に飼うことは出来ないなと思ってしまった。2024/02/20
ゼンタンくじら
15
獣医病理医として動物の解剖を行うことで、物言わぬ動物の「死」を学び「生」と向き合っている著者。人間の無知さ身勝手さに心が痛くなる部分もあったけど、著者の動物たちへの愛情と飼い主への配慮など著者の優しさも感じられたりして、とても学びになりました。動物と人間との距離が近くなり、家族のような存在になってきている。共生していく以上もっと動物たちの事を知らなければならない。2025/07/20