内容説明
生島遼一、伊吹武彦、天野忠、富士正晴、松尾尊〓(よし)、師と友。忘れ得ぬ人々、想い出の数々、ひとり残された私が、記憶の底を掘返している。自由なスタイルが、時代の杭ともなる、文の輝き。
目次
生島遼一のスティル
伊吹さん
長谷川さんの葉書
天野さんの傘
古稀の気分―松尾尊〓(よし)
裸の少年
ある文学事典の話―黒田憲治
一本一合―北川荘平と「日本小説を読む会」
ある“アンダスン馬鹿”のこと
富士正晴という生き方
初心忘るべからず
著者等紹介
山田稔[ヤマダミノル]
1930年北九州市門司に生れる。作家、元京大教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gatsby
15
山田先生の最新刊が出ているのを知らず、書店で偶然見つけて購入。久しぶりに、しばし山田先生の文章の世界を楽しむ。いつものように時間がゆっくりと過ぎていく。特別なことは起こらないし、描かれる人物も強く印象に残るようなことをしたり言ったりするわけではないのだが、自分が実際にその人物に会ったかのような思いになる。富士正晴氏に関する文章はいつもそうなのだが、生島先生や伊吹先生も、まるで自分が授業を受けていたように思えてならない。相変わらずの山田ワールドを楽しむことができた。2016/03/28
アヴォカド
4
1人でじんわり読みたいような文章である。中でも「天野さんの傘」「裸の少年」がことにいい。2015/12/22
hakodadi
3
大学で不肖の弟子だった私にとっては、長命で書き続けておられる先生への敬慕の念がまず先に立つ。題名にもある「天野さんの傘」は氏の本領の軽妙洒脱な逸話。親友・天野氏の逝去後の香典返しがなぜか黒い大柄の傘だったことに20年後になって湧いた疑問から始まる物語は、意外な結末に至る。内容はネタバレなので伏せるが、ふたり(と天野夫人)との深い交誼がうかがえて、情感にあふれる文章だ。なお、最後の話がパリの犬の糞の話で終わるのはスカトロ(糞尿譚)マニアを自称する先生の面目躍如だ。近著は図書館で偶然遭遇。是非購入せねば。2016/04/19
poefan
2
点鬼簿というよう内容。少しずつ読んできた。途中からその文章世界に取り込まれて後半は一気に読んだ。傑作。2016/04/15
Cell 44
1
生きていて、これくらいの精神の温度を忘れぬようにありたい。2017/09/06