内容説明
罠にはまったのはおれだった―オクラホマの地主と娘、先住民の儀式白人貧農の父子は、憎悪の果てに―。
著者等紹介
トンプスン,ジム[トンプスン,ジム] [Thompson,Jim]
1906年、アメリカ・オクラホマ州生まれ。油田労働者、ベルボーイなど、職業を転々とする。1942年、初の長篇を出版。1949年、初の犯罪小説『取るに足りない殺人』を発表する。『おれの中の殺し屋』(1952)など、ペイパーバック・オリジナルで作品を次々に発表する。『現金に体を張れ』『突撃』(スタンリー・キューブリック監督作品)の脚本に参加。1977年没
小林宏明[コバヤシヒロアキ]
1946年東京都生まれ。明治大学英米文学科卒。著書、訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
143
書かれたのは60年前。それよりさらに前のオクラホマ。父は貧しく、弱く...、だから、より弱い者達を力でねじ伏せてきた。男が老いて少年が成長したら、繋がりに愛がなければ、力関係の逆転はクリティカルになる。貧しさがさらに彼らを追い詰めた。そして、持てる先住民とは何か?持たない者と線を引いた白人政府の罪がそもそも根っこにある。ドナの一途な気の強さが終始頼もしかった。硬質なトンプソンはいい。しかし、冒頭の石油業者の登場が最後まで私の心に影を落とした。「花殺し月の殺人」で石油と先住民殺害の悲劇を読んだ後では...。2018/12/20
maja
19
オクラホマに於ける人種間の特殊性。そして主人公トムの家族関係の際どさ。その投げやりさはあきらめではなくむしろ不穏であり、しかし、何かしらの開放を待っているような気にもさせるが、彼は実に無防備に深みに嵌っていくのである。地主の殺害容疑が彼にかかる。事態はサスペンスフルにぐいぐいと進んでいく。一刀彫で彫られていくかたちを予想しても微妙に違っていくような。小さな生命に彼が無意識に気を留めた場面からは抜けるように空気感が変わり救いの予感が感じられてほっとした。 2018/12/14
bapaksejahtera
15
トンプソン初期作品。順応インディアン5部族にかなり荒い方式で土地が配分される。そうした幸運な混血インディアンの土地の中に流込んだ貧しい白人一家。3人家族は主人公である19歳の養子とその父親、その家事面倒を見るために連れてこられた若い後妻という危うい家族。石油採掘権を巡り地主の土地の中に僅かな自小作地を抱える白人一家は農地を取り囲む大地主とトラブルを抱える。ある日地主の当主が殺され主人公の若者に嫌疑が掛り、崩壊家族に守られなかった若者は自棄的となる。単純な筋立て一応ハッピーには終わる。それで私は十分だった。2022/10/22
Ayah Book
15
途中までかなり面白い。南部物をトンプスンさんが書くとこうなる。貧乏白人の地位はこの時代から底辺。捨ててあったサンドウィッチを盗み食いしようとする貧乏の哀しさ。しかしこの主人公はまともだ。ちょっとカッとなりやすいところはあるが、悪い人間ではない。今まで読んだトンプスンさんの作品で、こんなにまともな主人公は初めてだった。そこがちょっと期待とは違った。。。2019/01/31
hikarunoir
9
少年犯罪ものの一変種。題に反し黒人が出ず、代わりが先住民(と混血)との確執。父との対立も珍しく、ある工具から不穏な旧作を想起したが、案外穏やかに幕。2019/12/01