内容説明
アルコール専門療養所の長い一日、“酒浸り”な患者と危険なナース、マーフィーの治療のゆくえは―本邦初訳。
著者等紹介
トンプスン,ジム[トンプスン,ジム] [Thompson,Jim]
1906年、アメリカ・オクラホマ州生まれ。油田労働者、ベルボーイなど、職業を転々とする。1942年、初の長篇を出版。1949年、初の犯罪小説『取るに足りない殺人』を発表する。ペイパーバック・オリジナルで作品を次々に発表。『現金に体を張れ』『突撃』(スタンリー・キューブリック監督作品)の脚本に参加。1977年没
高山真由美[タカヤママユミ]
東京生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
77
1953年の小説。父から受け継いだアル中依存症治療施設で働く主人公が中心の群像劇。どうにかして運営資金を手に入れる決断をしなくてはいけない一日を描く。愚かしく印象深いアル中とスタッフたちと誠実であろうと苦悩する主人公。著者らしい描写が続くが、正直、普通のジャンル小説としてはどうなのかという疑問がある。勢いはいいのだが…… どう転ぶのかまったく不明なのは面白いが同時に困惑と戸惑いもある。アルコール中毒に苦しんでいた著者の反映があると訳者。著者のファンなら。2018/10/07
hit4papa
56
アルコール依存症患者専門療養所の、とある一日を描いた作品です。トンプスンと言えばノワール。本作品にこれを期待するとハズレてしまいます。登場人物たちに悪さ感はチラりと垣間見えますが、至って普通の嫌な奴ら。物語もサスペンスフルな展開は見られません。ほぼ療養所内に閉じており、登場人物たちの会話を中心にストーリーが進行することから、演劇的な印象を受けました。トンプスンの作品を残らず読みたい!というマニア向けの作品でしょう。濃密な仕上がりゆえ、ノワールを念頭からどかすと、そんなに悪くはない作品かもしれませんが。2019/07/11
ふう
18
原題は「The Alcoholics」。1953年作で、アルコール依存症更正施設の長い1日を描く群像劇(だと思う)。本文中の言葉を借りるなら「散弾銃のような」小説で、「狙いを定めたもともとのターゲットからいくらか衝撃が分散してしまうような」とっちらかった印象はあったが、「何も知らないまま邪悪に生きつづけ、その結果どうしても悪とかかわってしまい、苦しむことは避けられない。そしてそれは、やろうと思えばすべて簡単に避けられたことなのだ」なんて読むと、あぁやっぱこれジム・トンプソンだわと思えることも事実。2017/12/12
タナー
10
「ポップ1280」や「おれの中の殺し屋」を初めて読んだのはもう何年前だろう。あの時の衝撃は凄まじいものがあった。いまから60年以上も前に、こんな過激で生々しい描写の作品を描いていたとは....。扶桑社の文庫と単行本、さらには「ジム・トンプスン最強読本」も読破し、もうトンプスン作品は読めないのだと淋しさをずっと感じていた。つい先日AMAZON でたまたま見かけ、この作品の他にも未訳だった作品が刊行されているのを知った次第である。とにかく今は、まだ彼の作品を読めるんだという幸福感に浸っているところだ。 2019/10/01
hikarunoir
10
彼自体を作品とした場合、トンプスン作品特有の外部/辺境に相当する要素こそ、まさに本作に該当すると分かる。エル・レイ的珍品かつ不可欠の断片。2018/01/09