内容説明
わたしが手に入れそこなった何かを彼はもっている―彼とすれちがう人々、彼を愛する人々の視線とイメージの断片が織りなす、青年ジェイコブの生の時空間。ウルフがモダニズム文学に歩を進めた長篇重要作。
著者等紹介
ウルフ,ヴァージニア[ウルフ,ヴァージニア] [Woolf,Virginia]
1882年、ロンドンに生まれる。文芸評論家の父を持ち、知的な環境の中、文学的感性を若い頃からはぐくむ。20代の頃、ブルームズベリー・グループに参加。1915年、最初の長篇小説『船出』を出版する。「意識の流れ」の手法を追求し、『ダロウェイ夫人』『燈台へ』『波』などの傑作を生み出す。1941年、神経衰弱のため自死
出淵敬子[イズブチケイコ]
1937年、東京生まれ。1961年、日本女子大学英文学科卒業。1968年、コロンビア大学大学院修士課程修了。1970年、東京大学大学院博士課程満期退了。日本女子大学文学部名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かもめ通信
26
どの場面も細やかに描写され、その表現がまたうっとりするほど美しかったりもするのだが、場面も登場人物もめまぐるしく変わり、時間も空間もいったりきたりで、なにかをつかんだと思うと、そのなにかが指の隙間をすり抜けていくかのよう。だが少なくとも、彼は自分の部屋を持っていた。そしてその部屋を、多くの人が訪れて、多くの人が出て行った。それはまさに、彼の人生そのものようで……。2021/11/15
akubi
6
宇宙模様の蝶や蛾。真っ白な羊の頭蓋骨。愉しげに海に沈むシェイクスピア。風のふきつける丘の上に灯るガイ・フォークス像の焼かれる炎。月光にゆれる柘榴石のブローチ。引き裂かれた切符。囁かれたいくつもの会話の断片。交わされ絡まる視線。 わたしが迷い込んだのは、そう。たしかにジェイコブ(或いはいつかの思い出の欠片)を語る、浜辺に設えたインスタレーション。あらゆるひとの目に眺められた彼の輪郭。メカスのようなやさしい記憶、あるいは時にゲリンのようなやわらかい詩的なフィルムをそえて。2022/02/21
warimachi
3
よくわからなかった。2022/01/22
のうみそしる
2
脈絡なく入れかわり立ちかわり、行が違えば距離も時間も飛び越す。評論ぶっこみ情景ぶっこみなんだこりゃ理解できそうもない、でも不思議と美しい。「というのは」が心底辛かった。説明してるようでなにも言ってないので。『それを咎めようが讃めようが、われわれの心の中には野生の馬がいることは否定できない。』2022/06/25
御庭番
2
ウルフ、難しー! 散文のように言葉が飛ぶけど、結果的にはちゃんと意味をなしていて、理解できない自分の脳みそのボンクラさを思い知る。 【図書館で借りました】2021/10/01