内容説明
ナチスとは何か―宣伝から探る、その本質。ヒットラーはまだ宣伝をつづけている―ラジオ、映画、美術、建築、詩…侵蝕するプロパガンダ。万巻の書を博捜し、多岐にわたるジャンルを自在に越境した著者による、ナチス研究の名著。
目次
記念切手―神たるヒットラーは肖像権を要求した
ポスター―インキの嵐「大ドイツ帝国、異議なし!」
広告―骨抜きと抜け穴のニヒリズム
マンガ―なに、チャーチルか、ありゃ嘘つきだ。だが大物だ
美術―どうして芸術たる宣伝が芸術を低下させる!(ゲッベルス)
建築―大きければ大きいほどよい
映画―「びっこのあひる」のギャング的手法
放送―悪魔の微笑・情報の悪魔
スポーツ―彼は泳げもしなければ自転車にも乗れなかった
オリンピック―ヒットラーが見物を休んだのは一日だけである
雑誌―トリッキーな魔法を駆使したナチスのグラフィズム
文学1 詩―総統の下僕 復讐者たるかれら
文学2 小説―自負は自衛である
文学3 書簡―お懐かしい お母さん
著者等紹介
草森紳一[クサモリシンイチ]
1938年、北海道生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒。編集者を経て文筆家に。1973年、『江戸のデザイン』(駿々堂出版)で毎日出版文化賞受賞。ライフワークである李賀、副島種臣から、デザイン、絵画、写真、広告、建築、マンガまで、さまざまな分野を跨ぎ、先駆的な著作を著した。2008年3月歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
シリーズ最終巻。一巻二巻がゲッベルス、ヒトラーといった大きな括り。三巻が扇動の方法なのに対して、本書で扱われているのはナチスが美術や映画、ラジオにオリンピックといった文化をいかにしてプロパガンダに生かしたかという事が述べられている。オリンピックやラジオに関してはその宣伝の手法は研究しつくされている観があるけど、漫画や雑誌、詩に小説といったものに関しては初耳となるものが多い。特に雑誌に関しては当時発刊されたものを手掛かりに、デザインから英雄まで細部まで論じつくされている。読み終えて圧倒されるばかりである。2018/08/16
ののまる
8
草森さんの文章が、読みにくくてすごく大変だったなー2020/01/01
ナン
3
記念切手、ポスター、広告、マンガ、美術、建築、映画、放送、スポーツ、オリンピック、雑誌、詩、小説、書簡のそれぞれについて、ナチス政権下では実物はどんなものなのか、どのように利用されていたかが具体的に書かれており、ここまで分析した本は他にはないのではないかと思う。特に雑誌の章が面白く、PK(プロパカンダ・カンパニー)部隊の存在をはじめ、ナチスがいかに戦場でのグラフィックを重視していたかがわかる。また、ポスターや建築、雑誌の写真等も多く掲載されており、そこも見所の一つ。