内容説明
彗星のごとく煌めいた作家の光跡。初期の傑作「悪意がいっぱい」ほか、初単行本化作品三篇収録。
著者等紹介
鈴木いづみ[スズキイズミ]
1949年7月10日、静岡県伊東市に生まれる。高校卒業後、市役所に勤務。1969年上京、俳優として活動。その傍ら、1970年に小説「声のない日々」が文學界新人賞候補に選出される。以降は、作家としての活動が中心になり、文芸誌、映画雑誌など、幅広い媒体に執筆する。1986年2月17日、自死。享年36(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ykshzk(虎猫図案房)
17
この人の本面白いよ、と外国人に教えてもらい読んでみると、これが面白い。個人的に逆輸入ヒット。ヌードモデル、ピンク女優を経て作家活動、36歳での早逝。SF的で独特な世界観は、残酷なのにカラッとしていて、後味が悪い感じはしない。600Pを超える超厚本だけれど29編の短編の集合なので、拾い読みでも楽しめる。表題作の「契約」も面白いし、ハクスリーの「〜新世界」を思い出させるようなものもあったり。夫だったサックス奏者の阿部薫との生活を描いた小説・映画「エンドレスワルツ」も気になるところ。 2022/07/08
流之助
11
図書館本。作者がもう亡くなってしまっているのが残念でならない。生きていたら、どんな作品を書いただろう?長編を書くこともあったかな?固有名詞や薬物についての描写もあり、フェミニズムの視点から読める作品も。もし長く生きていたら、その視点がどんな新しい文脈に注がれるのか読めたかもしれないな。宇宙人との恋愛が描かれる二篇が好みだった。ユニークな短篇もあるので楽しく読み終えた。2025/01/12
ナカユ〜、
2
あっけらかんとして、どこか寂し気で、SFに無理矢理近づこうと頑張ってるけど、後半に進むにつれSFという箱から飛び出して、自由に自分らしくなってゆくよね。僕はこの人をよく知らないから、一人の作家として認識して読み進んでいきましたが、それが功を奏した感じで楽しめました。2016/04/06
ぶうたん
2
読了まで随分時間がかかってしまった。記録では10数年前にブロンズ社版の作品集を読んで以来になる。生前最後の2編はリアルタイムで読んでいるはずだが記憶が無い。新井苑子の挿し絵だったはずだ。分かりやすい作品では無い。これはSFなのかと疑問を感じるものもあるが、恋と音楽に彩られた作品群は独自のものであり、世界への違和感はカヴァンを髣髴とさせる。固有名詞は自分は年代的にわかるが、若い人はどうなのだろう。大森氏ほど買わないが、他の人の感想を聞いてみたい。2014/08/10
だだ
1
70年代を中心とした鈴木いずみのSFっぽい作品の集成。宇宙が舞台の空想科学小説的なもの、その時代の風俗や世の中や生活を感じさせるもの、今も変わらぬ若者の意識を描いたものなど多岐にわたる広義のSF作品集。中でも秀逸なのは女性や少女たちの意識や感覚を描き出した作品。それだけは今も全く古さを感じさせない。その当時、まだそんな言葉は一般的では無かったであろうけど、サブカルチャーの世界でカリスマ的女性だったと思われる鈴木いづみが今も生きていたなら、何をしていて、どんな物語を書いていただろう。2014/09/29