内容説明
故郷への回帰、日々のうつろい、戦火の記憶と幻影…“内なるアメリカ”を描いた第一作「壁の絵」をはじめ、野呂文学の原点である瑞々しい初期作品を集成。
著者等紹介
野呂邦暢[ノロクニノブ]
1937年、9月20日、長崎市岩川町に生まれる。長崎県立諌早高等学校を卒業後、様々な職を経て、19歳で自衛隊に入隊。入隊の年、諌早大水害が発生。翌年の除隊後、諌早に帰郷し、水害で変貌した故郷の町を歩いてまわり、散文や詩をしたためる。1965年、「或る男の故郷」が第二十一回文學界新人賞佳作に入選。芥川賞候補作に「壁の絵」「白桃」「海辺の広い庭」「鳥たちの河口」が挙がったのち、1974年、自衛隊体験を描いた「草のつるぎ」で受賞。1980年、急逝。享年42(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ito
50
野呂邦暢さんの小説と出会ったことに、感謝したい。本書は小説集成として11編の短編で構成されている。野呂さんの小説は一編読んだだけでは、その良さがわかりにくいのかもしれない。今回、まとめて読むことができたおかげで、いくつかのテーマが見えたのがよかった。戦争や自衛隊などを扱ったものが多く、重くて未来が見えないものばかりだ。しかし、逃げ出したい現実や妄想を背景にしつつも、心理描写の展開に息を止めその世界に引き込まれた。対称的に描かれるふわりとした自然描写もまた素晴らしく、眼前に風景が広がるようであった。2013/08/24
7kichi
4
このところミステリ三昧だったが、野呂邦暢の作品が新刊で発売中と聞いたら手に取らずにはいられなかった。どんなペースでリリースされるのかわからないが、予定通り第八巻まで無事刊行されることを祈る。全部買う。2013/06/06
あにき
3
陸上自衛隊出身で芥川賞作家。戦争×文学シリーズで初めて読んだが、新刊では限られた作品しか入手できず残念に思っていたら、このシリーズの刊行が始まった。少しずつ何かがズレていく描写が巧みで、読み手も心していなくては巻き込まれてしまう。また小刻みに移り変わる心の葛藤の描写も緊迫感が伝わってくる。マニアとしては氏の隊内キャリア等を知りたいので、続刊の解説などでそのあたりに触れられるかに期待している。Wikipediaでも佐世保自衛隊って書かれているし。って何なの、佐世保自衛隊って!?2013/08/18
Voodoo Kami
1
先に長大な随筆集全2巻を読んでいたことで、物語がとても立体的に感じられました。それは野呂さんが折々の中で考えていたことが書かれた随筆のいくつかが実際に小説の中で形になっているからなのでしょう。どの短編も味わい深く、その根底にはどれも「喪失感」が佇んでいる。 「壁の絵」や「或る男の故郷」に出てくる女性たちはあまりにも野呂さん的知性に満ちあふれた会話をするためおよそ女性性が感じられず、微笑ましくも苦笑しました。「世界の終わり」でのアクション場面はかなり珍しいのではないでしょうか。次の第2巻が楽しみです。2015/05/03
shizuka
0
残念ながら、エッセイを読んでいる時のような恍惚感は得られなかった。初期の小説がほとんどだが、なんせ戦争モノが多い。字を追うのが辛い。作品中、野呂邦暢は主人公にこう言わせている。「女にとって最も遠い関心事は戦争であろう。」と。2017/01/05
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