内容説明
奇妙な館に立ち現れる幻の階段を上ると辿り着く別次元の部屋で彼女が見たものは…イギリス南東部を舞台にした、リンゼイの思弁的幻想小説。
著者等紹介
リンゼイ,デイヴィッド[リンゼイ,デイヴィッド] [Lindsay,David]
1876年、ロンドン生まれ。スコットランドの旧家リンゼイ一族に連なる名門の家系であったが、生活は苦しく、大学進学を断念して保険会社に勤務する。38歳のとき結婚したのを機に、コーンウォールの田舎に暮らし、執筆活動をおこなうようになる。1945年、死去
中村保男[ナカムラヤスオ]
1931年、東京生まれ。東京大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
伝説の文庫レーベル本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
35
今作の前に読んだ同著者の『アルクトゥールスへの旅』がずいぶんと哲学的かつ思惟的小説だったので本作も同様のものかと思いきや、意外にも読み易く、不安で不穏当な幻想小説として大いに楽しめた。とは言えそこはやはりエンターテイメントではないので、帯やあらすじにある「あるはずのない階段」に惹かれて読むと、そのあたりの不思議についての言及が少なくて不満に感じることもあろうかと思う。もっと階段について書いてほしかった。デイヴィット・リンゼイの邦訳はこの二作しかないらしく、他の作品が誰かによって訳されることを強く願う。2014/07/07
きゅー
10
古いお屋敷にある、普通の人には見えない階段。ホラーじみているが、そういう物語ではない。作中において、灯火に引き寄せられて焼かれる蛾がイメージされているが、登場人物も同様にのっぴらきならぬものに引き寄せられ、破滅への道を歩む。見えない階段を上ると運命を冀い、運命を担い、そのためにすべてを抛とうとする人も、階段の下では礼節と礼儀作法の縄に囚われている。物語が最高潮の場面で、世界は暗闇と春の穏やかな日がせめぎあい、いずれかが勝利する。人間の精神の上昇と下降を、ここまで陰影に富んで描写することが可能であったとは。2014/08/04
roughfractus02
8
ヴィクトリア朝のモラルが残る20世紀初頭の上流階級は、表向きは厳粛なマナーを守りつつ心の中の思いをひた隠す。作者は、この表裏を階層化した建築を作り、恋愛をテーマに真実の残酷さを幻想的な物語にした。婚約者のいる女と古い屋敷の主人はある感覚を持つ者にしか入れない最上階の部屋で愛を語る。が、部屋を出る度に記憶も消える。その部屋は13世紀トロールに運び去られたという噂があった。部屋の窓からは古代を思わせる秋の美しい風景が見え、後ろ姿の男が音楽を奏でている。モラルからの自由を求める2人が窓外に出ると、破滅が訪れる。2023/12/20
堆朱椿
4
恐怖がテーマではないのだけど、じんわりと怖い。無いはずの階段を昇ると、微妙に変化する主人公。真の自分に近くなるのか、その場所のせいで変質するのか。解釈は読む人によって違いそう。2014/12/06
バーベナ
1
森林に囲まれた館。ここを借りようと訪れたイズベル。婚約者にも伯母にも見えないのに、彼女の前にだけ現れる階段。。異常な体験を、大切な人と共有できなかった時の孤独感は、今までの関係を壊してしまう。でも、きっとそれをわかっていても、階段を上ってしまうのでしょう。現実に戻ってこれない方が幸せ?2013/09/22
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