内容説明
パリ、1960年代―物への欲望に取り憑かれた若いカップルの幸福への憧憬と失望を描いた、長篇第一作。ルノドー賞受賞。徴兵拒否をファルスとして描いた第二作を併録。
著者等紹介
ペレック,ジョルジュ[ペレック,ジョルジュ] [Perec,Georges]
1936年、パリ生まれのユダヤ系フランス人作家。フランス国立科学研究センターに勤務しながら、1965年、最初の長篇『物の時代』を発表し、ルノドー賞を受賞する。レーモン・クノーらによる実験文学グループ「ウリポ」に参加。大胆で実験的な作品を生涯にわたって次々に発表し、1978年、『人生使用法』でメディシス賞を受賞。1982年、死去
弓削三男[ユゲミツオ]
1922年生まれ。九州大学文学部仏文科卒業。ストラスブール大学、パリ大学留学。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
73
「なんとなく、クリスタル」(1980)に影響を与えたとされる「物の時代」(邦訳1978)を収録した再刊本。「物の時代」のみ読了。パリの若いカップルの空虚な消費社会での生き方を描く。社会学者でもある著者の論文的な文体で語られる、存在感が薄い彼らよりも饒舌な彼らの周りの商品・物たち。平易な書き方でこの絶望的な虚しさを描く発想に感心。うーむ。これは手元に置いておきたい。オススメ。2018/07/06
ヴェネツィア
67
2つの中・長編を収録。『物の時代』(原題は"Les choses")は、室内を眺める眼が見た記述から始まり、そこにある物が列挙されて行く。我々の生活はなんと物に溢れていることか。しかも、人間が物の所有を欲望するのではなく、物の存在が我々に欲望を喚起するというのが、まさしく現代社会の構造だ。小説にはジェロームとシルヴィという2人の主人公が登場するが、彼らの間に会話が交わされることはない。その意味では、この小説はいわばレシ(物語)の方法によって書かれているのだろう。そして、彼らは「私」であったかもしれない。2013/06/27
兎乃
37
文遊社にて復刊。嬉しい!以前は白水社。。物欲に囚われたパリに住むカップル、物であふれるアパートに嫌気がさし、北アフリカへ移住するも…。モノ=商品だけに焦点を当て、時制を操る超絶技巧。学生・兵役・アルジェリア戦争・結婚とチェニジア滞在、ペレックの自伝的側面を濃厚に反映させながら自らの位置を批判的に描く初長編。視座の確立と筆力の刷新を感じる。この作品の後、ペレックは「OULIPO」に参加する。→2013/06/24
saeta
14
「物の時代」は、夫婦間の会話も無い構成の影響か物欲主義から来る印象からか、顔の見えない空疎な作品だった。ウエストン(J.M. WESTON)の靴の記述が出て来たのには驚いたが、注釈がパリに店を構える英国の高級靴店とあったが、1920年代にパリ1号店を出店した歴史あるフレンチブランドである。訳者の方や出版社はあの著名なウエストンを知らないとは、ファッションに疎い方々なのかな!2019/04/03
きゅー
13
ペレックらしさにあふれた2編が収録されている。「物の時代」では物質主義的な夫婦の生活が描かれている。この小説ではすべて地の文で構成されており、彼らの行動はすべて第三者の神の視点から記述されている。会話文なしに200ページは途中で飽きてくるかとおもいきや、そんなことはなく、彼らの生活の放埒さ、楽天主義、金銭への欲望などが面白おかしく綴られている。2017/01/10
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