内容説明
毎日新聞社会部記者として、若者の引きこもり、いじめ、薬害エイズ、障害者虐待、児童虐待などの現場を取材し報道し続けてきた。そして、全日本手をつなぐ育成会権利擁護委員長として、障害者の人権を守る活動で大きな役割を果たしてきた著者が、渾身の力を込めておくる感動の物語。
目次
1章 なぜ、千葉で始まったのか
2章 さまざまな顔をして差別はあらわれる
3章 悲しいのはあなただけじゃない
4章 私たちの条例案ができた
5章 壁―二月議会
6章 世界は一センチずつ変わる
7章 撤回―六月議会
8章 小さな奇跡―九月議会
資料 条例原案と成立した条例
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mai
7
条例が実現出来てよかった♪2013/06/10
Yuko
5
<日本で初めて障害者への差別をなくす条例をつくろうとした千葉県の福祉改革プロジェクトの記録。資料として原案と成立した条例を掲載> 途轍もない時間と労力と要する条例作りの大変さを垣間見る。本著を読むまでそれがどれくらい大変なことなのか想像することすらできなかった。 罰則もない条例で障害者の権利が守られるのか?と、著者も問うているが、条例は誰かを罰するためのものではなく、立場や価値観が異なる人々が、お互いを理解し折り合いをつけていくための拠り所になるものと信じて、条例成立まで尽力し続けた著者の奮闘記。 2018/08/24
hana@マインドサポーター
4
私自身も、障害のある子どもをもつ親としての立場で読み、全国に先駆けて条例を作ってくださった野沢さん達の熱い思いと行動力に感動した。この本が書かれた2007年から随分時が経っているが、差別は簡単にはなくなっていない。でも、周りを見ると理解は確実に進んでいると思う。そして、さすが記者、文章がとても読みやすかった。2024/06/12
亀山正喜
4
著者と直接話す機会があり、なぜ障害者の制度設計に携わるようになったのか、そのルーツが千葉県の条例作りの過程にあるとのことだった。読了し、福祉業界を超えて心に残るものがあった。今存在している法律や条例全てにここまで開かれた議論があったとも思わないが、成立した過程や、どのような考え方でこの文言になっているのかなど思いを馳せることが大切だと感じた。また今後様々な議論に関心を持ち続け、当事者として関わる努力をしていきたいと思った。
カワウソさん
4
この物語は、日本で初めて「障害者差別をなくすための法律」を作り上げた人たちの物語である。障害者とは何なのか?差別とは何なのか?を考えながら、条例が成立するまでの過程を描いている。法律は理想の体現の第一歩であると思うのだが、その一歩ですらこれだけの厳しさを伴うのだ。この物語は決して「感動の物語」にとどまってはいけない、現実に起こっている理想の体現の物語なのだ。2018/05/11