内容説明
『西洋の没落』は大衆の気分に迎えられて爆発的に売れたが、その内容は必ずしも理解されたとはいえず、またアカデミズムからは「グロテスクな書物」としてその批判も手厳しかった。その真意が正しく理解されなかったため、シュペングラーはこの誤解を解くために、改めて「技術」の問題に焦点を絞って「人間―文化の運命」について述べようとしたのである。本書は、もともと「文化と技術」という題で1931年(5月6日)にドイツ博物館で講演したものに手を加え、同年7月に出版されたものである。
目次
1 生の戦略としての技術
2 草食動物と肉食動物
3 人間の起源―手と道具
4 第2段階―話すことと企てること
5 結末―機械文化の興隆と終末
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
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シュペングラーの語る無常は、我々の知る敗者への共感に満ちた無常とは異なり、弛まぬ生命活動そのものだ。盛者必衰!…それでも雄々しく闘い続ける事を礼讃するのである。シュペングラーは闘いから行動原理を抽出し、人間を頂点とする肉食動物を「支配する者」と呼んでいる。鋭い眼を持つ彼らは外へと無限の光を投げ、内には「魂(ゼーレ)」を持つ。こうして所有、権力、敵意、誇りが生まれる。私は、闘いの悲劇性を讃えるこの世界観からイリアスを連想した。感覚的支配者「眼」に対し、実践的支配者「手」は技術を生む…こちらはオデュッセイア?2015/07/17