フィクションのエル・ドラード
境界なき土地

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  • サイズ B6判/ページ数 171p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784891769529
  • NDC分類 963
  • Cコード C0397

内容説明

大農園主ドン・アレホに支配され、文明から取り残され消えゆく小村を舞台に、性的「異常者」たちの繰り広げる奇行を猟奇的に描き出す唯一無二の“グロテスク・リアリズム”。バルガス・ジョサに「最も完成度の高い作品」といわしめたチリの知られざる傑作。

著者等紹介

ドノソ,ホセ[ドノソ,ホセ] [Donoso,Jos´e]
1924年、チリのサンティアゴのブルジョア家庭に生まれる。1945年から46年までパタゴニアを放浪した後、1949年からプリンストン大学で英米文学を研究。帰国後、教鞭を取る傍ら創作に従事し、1958年、長編小説『戴冠』で成功を収める。1964年にチリを出国した後、約十七年にわたって、メキシコ、アメリカ合衆国、ポルトガル、スペインの各地を転々としながら小説を書き続けた。1981年にピノチェト軍事政権下のチリに帰国、1990年には国民文学賞を受けた。1996年、サンティアゴにて没

寺尾隆吉[テラオリュウキチ]
1971年、愛知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、フェリス女学院大学国際交流学部准教授。専攻、現代ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

63
今まで味わったことのない作品世界。こういうのは、好きだな。娘ハポネシータから「パパ」と呼ばれることを嫌うオカマのマヌエラは、パーティーやワイン、服や男が大好きな気狂い女だ。町の権力者ドン・アレホのもつ店の所有権を奪うためにハネポサから持ち込まれた同衾の賭けに、「ダメダメダメ、何もしなくたってイヤ、女の体は気色悪いのよ、柔らかい胸も、贅肉の多いぶよぶよの体も大嫌い、何か物が埋まったらそのままなくなっちゃいそう、お尻もイヤだし、一つにくっついた太腿なんて想像しただけでゾッとするわ、ダメダメ」と言うマヌ2015/01/10

HANA

62
滅びかけた町での性的「倒錯」者を描く一冊。『夜のみだらな鳥』や『別荘』が持つ現実が何かに侵犯される内容に比べると、まだリアリステックな内容に感じられる。それでも登場人物個々人に奇妙な狂気みたいなのが感じられるのは、やはりドノソであるな。ただ題材が滅びかけた町と性的マイノリティという事から、ラテンアメリカ文学だけが持つ、独特の哀感、現実に対する哀しみみたいなものが全編に横溢しているよう。中盤の酒場の女主人とのセックスも、行為は行為だけど何故かそれが非常に悲しい。映画化されたらしいので是非見てみたいものです。2019/10/21

藤月はな(灯れ松明の火)

53
ラテンアメリカでは、男らしい男=マチョは妻を何人持ってもいいし、暴力を振るっても許され、尊敬されるらしい。但し、所有している妻子を全て支えられる程、経済的に豊かであるならばだが。それを踏まえるとドン・アレホ(大地主)とパンチョ(マチョ)、マヌエラ(オカマの舞踏家)の支配・隷属関係は、そんなマチョ文化でのヒエラルキーを抉り出していると言えよう。蓄積した鬱屈はやがて最下端の者に行く。自分に正直で打算もある、娘を省みない「母」であり、「父」のマヌエラが自分でしかなかったということに気づく場面と娘の言葉が寒々しい2014/10/24

ω

46
控えめにいってサイコーω♫ こういう、消えかけの村で性・金・酒・暴力が集まった本て何故こうも惹かれるのか…(=`ω´=) ラテンアメリカブームの立役者らしい。 160ページくらいですぐ読めるので機会あれば是非ω2022/08/27

おおた

31
時間を予告なしにすっと20年くらい動かしたり、寒村でささいなことで争ったり、ゲイとクズマッチョがくんずほぐれつしたりと、ラテンアメリカ文学ならではという素材が詰まっている。プイグにも通じる滑稽だけど悲しく優しいピエロの内面描写に揺さぶられる。一方で、さんざっぱらバカにしていたゲイのダンスでダメマッチョが興奮してくるシーンでは、自分の中の黒い笑いが止まらなくて。下衆な人々を見て下衆な自分を見つめることになる。『夜のみだらな鳥』だけではない、正調ラテンアメリカ文学として作者の懐の深さに感服させられる。2013/08/08

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