内容説明
「あのこと」のさなかにも書き続けられた『七夜物語』。「あのこと」の後に書かれた『神様2011』、『センセイの鞄』、『真鶴』など代表作を“ゆらめき”の諸相から読み解く。川上弘美の“いま・ゆくえ”を浮き彫りにする書き下ろし。
目次
第1章 川上弘美の出発/現在―「神様」・「草上の昼食」・「神様2011」
第2章 蛇(と母)に関する寓話‐実際の話―「蛇を踏む」
第3章 せつない純愛/新しい関係―『センセイの鞄』
第4章 小説における名前と名指すこと―『ニシノユキヒコの恋と冒険』/『龍宮』
第5章 小説内/外における“書くこと”―『真鶴』
第6章 ゆっくりと、別れを選ぶ―『風花』
第7章 言葉の力、物語の力―『七夜物語』
著者等紹介
松本和也[マツモトカツヤ]
1974年、茨城県に生まれる。立教大学文学部を卒業後、同大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、信州大学人文学部准教授。専攻、日本近代文学・演劇(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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林 一歩
24
川上弘美と小川洋子の作品は語り始めるとキリなく語り続けることが出来る気がします。作風は違えど独特の浮遊感と諦念を孕んだ女性らしい語り口は、男の身からするとかなりエロチックに映る事も多く、新刊が出る都度必ず購入する作家でもある。 川上弘美の代表作を中心にいろんな批評家のコメントを引用しながら紡がれだ評論集。『蛇を踏む』に関する考察は膝打ちまくり。まあ、文学なんて読み手が好きに解釈すれば良い読み物だと思っているが、実は難解な川上作品を初めて読む方には一つの標となる優良な書評だと感服した次第。2014/04/27
かわかみ
4
小難しい文芸評論。著者によるとベストセラーの恋愛小説とみなされた「センセイの鞄」はその実、異性愛主義をかろやかにのりこえた先に現出されたセンセイと月子による新しい関係を描出した作品なのだそうだ。特に著者の見解に異を唱えるつもりはない。だが、それが正しいとすると、ことほど左様に作家の意図と読者の解釈のギャップが大きいことは、もはやギャグのようにも感じられる。2023/11/12
女神の巡礼者
0
川上弘美さんのことは、芥川賞受賞の新聞記事で大学のSF研究会出身ということを知り興味を持ったのがきっかけで読み始めてファンになりました。それで本書を手に取ったのですが、文学評論とはいったい何?と考えてしまいました。著者のような文学博士をはじめとして、一冊の本を読んでこれほど深く考えている人々がいるのですね。私などは、川上弘美さんの小説を好きな理由を聞かれても、明確には答えられないと思います。それが駄目だとは思いませんが、何故小説を読むのかということが最近気になっていますので、もう少し考えたいですね。2013/06/15