内容説明
汚染、エコロジーブーム、失われる季節感…。“食”に対する意識が問われるいま、4人の文学者との対話を通じて、人間と環境との関係の再考をうながす、新しい文学批評のかたち。
目次
第1章 石牟礼道子との対話(インタビュー 人は何を食べてきたのか;論考 食の汚染をめぐる言説への文学的抵抗―『苦海浄土』とポスト水俣文学)
第2章 田口ランディとの対話(インタビュー 食べてつながりの世界に近づく;論考 憧憬と抵抗―汚染と食をめぐる文学実践)
第3章 森崎和江との対話(インタビュー 共食の論理;論考 近代へのディアスポラ的介入―共食の世界)
第4章 梨木香歩との対話(インタビュー 境域の食風景;論考 食をめぐる手仕事の世界―ハイブリッドで呪術的な食卓)
著者等紹介
結城正美[ユウキマサミ]
石川県に生まれる。ネヴァダ大学リノ校博士課程修了(Ph.D.,2000)。現在、金沢大学外国語教育研究センター教授。専攻、環境文学、エコクリティシズム(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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芽
29
「食はエロい」と友人が言う。その「エロティシズム」は恐らく、食による自他の境界の揺らぎに起因する。石牟礼道子、田口ランディ、森崎和江、梨木香歩の4人の作家へのインタビューとそれぞれの作品世界に関する論考を通し、著者は食と文学の交差地点を探る。テクスト分析に加え作家自身の「身体的・思念的現場」に目を向ける著者の柔らかい感性に共感する。社会的観点からの環境の議論も鋭い。「食のエロティシズム」をめぐる梨木との対話をはじめ、どの作家の生の言葉も味わい深いが、著者の視点を通すことで上手く「食べごしらえ」されている。2017/07/05
ハチアカデミー
10
石牟礼道子、田口ランディ、森崎和江、梨木香歩へのインタビューと論考によって「食事」にまつわる心性を考察。『苦海浄土』の「水俣わかめ」やチェルノブイリの汚染された食料、松の葉など、一般には食されないものを食する場面を取り上げることで、食べ物観が揺さぶられる。育てること/捕らえることから、食べるまでの距離が遠くなるほど、食べ物が食べ物そのものに過ぎなくなるというフードチェーンという概念が面白い。また、数値(カロリーなど)で認識されることで、どのように作られ、加工されているのかが見えなくなるという指摘も納得。2013/03/17
みみこ
1
食べることと生きることは切り離せないからそれぞれに思うことはあるはずなのだけれど、意識的に意識している人、しかも、自意識過剰にならずに意識している人はどのくらいいるだろう。私もたまに、食事は作業や義務になってしまう。2017/09/20
宮崎太郎(たろう屋)
0
食べることと食事の違い、食べることへの関心が薄れている現代人には響きます。
かみのけモツレク
0
よいブックガイド2018/03/26