内容説明
ギリシャのレロス島から、パリ郊外のラボルド精神病院へ―。稀代の哲学者の原点を知るための、もっともコンパクトなガイダンス。ガタリ自身の日記、盟友ジャン・ウリによる追悼文や貴重な写真などをモンタージュする。
目次
本書の成り立ちについて(ステファヌ・ナドー)
フェリックス・ガタリの思い出(マリー・ドゥピュセ)
レロス島日記
精神の基地としてのラボルド
フェリックスのために(ジャン・ウリ)
フェリックス・ガタリと制度論的精神療法―制度と主観性をめぐって(杉村昌昭)
著者等紹介
ガタリ,フェリックス[ガタリ,フェリックス][Guattari,F´elix]
1930年に生まれ、1992年に没する。思想家、精神分析学者。いまもなお現代思想に大きな影響を与え続けている
杉村昌昭[スギムラマサアキ]
1945年、静岡県に生まれる。龍谷大学名誉教授。専攻は、フランス思想・文学、社会運動論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きつね
4
精神病院の在り方を根底から問い直したラボルドの実践について、ガタリが記した「自伝」と、ギリシャの劣悪な精神病院を視察しにいった「日記」の二つのテクスト。つけたり、周辺人物による解説や回想録、弔辞。適度に短いので入門にオススメ。個人的には、「反精神医学」とラカン、この二つに対するガタリの是々非々の批判的態度がイメージしやすくなってよかったです。物足りない人はフランソワ・ドッスの『交差的評伝』を併せてどうぞ。関連資料:映画『すべての些細な事柄』、写真集『ソローニュの森』2012/10/11
磊落のい
1
ガタリとジャン・ウリとの出会いが、ウリ目線で記載されていて、始原について詳しく知れます。また、個人的に、「産業化社会と家族状況の中で疎外されて折出してくる現代の狂気の特質を強調し、反精神医学の旗手とみなされるようになったR.Dレインやデビッド・クーパー」について、家族内の紛争の帰結というような、一種の還元主義的な観念に信任を与えたことや、理論的な側面に依拠しており、新たな発見をしたにも関わらず、状況を変えるための具体的提案に結びつかなかったなど、批判的に語られているところが、勉強になりました。2017/02/09
wanted-wombat
1
ガタリ自身によるテクストと、他の人たちによる紹介が半々ぐらい。ガタリのテクストは、彼が目の当たりにした光景がリアルに感じられて、かなり揺さぶられる。そんなに昔の話でもないのがショック。2013/11/01
mori-ful
0
『精神病院と社会のはざまで』。ガタリと反精神医学には距離がある(「精神の基地としてのラボルト」)。社会的疎外と精神(病)的疎外。ガタリ曰く精神分析は科学万能主義のもとで生まれたという「起源的欠陥」があるが、むしろ「無意識とその複合性を発明した」というべき。それは幻視者が新しい宗教を発明したり、世界や社会的諸関係の新しい生き方を発明したのと同じ。「治療は芸術作品ではありませんが、芸術作品と同じような創造性から生まれるものなのです」2024/07/14
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- 和書
- 遠い声遠い海 集英社文庫