内容説明
聖王に逆らい、ジャンヌ・ダルクとともに戦い、馬と話し、錬金術を見出す…数世紀をまたにかけ、数々の冒険を繰り広げる破天荒な騎士、オージュ公。一方、２０世紀、動かない川船で、暗い過去を抱えながらも、平凡な生活を送るシドロラン。互いを夢見あう二人が７００年の時を超えて出会う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
138
最後に何十頁もある解説は読み飛ばそう。読み手がそれぞれ好きに楽しめばいいではないか。深読みしようとしまいと、ただ13世紀と現代の真面目で愚かな二人の話、二人のドン・キホーテと二頭のロシナンテの話を。公爵は、城から野原を見て過去を回想する。過去は折り重なる。未来は溶け合う。公爵は深い川底を勇敢に、躓きながら進んでいく。足元が過去の砂なら、流れる水は未来。水はゆっくりと進んでいく。現代の男は浅瀬に足を取られながら進んでいき、ついに流れが合流する。ふっと顔を出して、息をついて見えるは、小さく愛らしい青い花。2017/04/21
兎乃
19
クノーといえば文体練習って感じですが、「青い花」が一番好き。たぶん一般的にも評価の高い作品だと思う。凄いお値段になってしまった滝田訳から、新島訳へ。水声社さん、感謝！動かない河船で惰眠を貪るシドロラン。彼の夢に出てくるオージュ公爵は十字軍、百年戦争、フランス革命...と「歴史」を飛び回り、実に忙しく愉快で間抜けで自由だ。その公爵はシドロランを夢で見ている。夢を見ることを契機に主人公が入れ替わりつつ、→2013/02/02
かわうそ
8
眠りにつく度に主人公が入れ替わりながら次第に境目がシームレスになっていったり二つの世界が少しずつシンクロしていったりさまざまな仕掛けが楽しい。夢を見ているのは誰かというテーマだけでも延々議論できそう。2013/03/04
いのふみ
4
この細緻に組まれた小説をほんとうに訳出、理解することなどできるだろうか。2017/10/11
koala-n
3
著者の代表作の一つ。１３世紀の貴族のオージュ公爵と、現代のパリ在住のランティエであるシドロランの二人が主人公。お互いが眠りに落ちるごとに主人公が交代するという形式で、お互いがお互いの夢を見ているとも言える「胡蝶の夢」的な話で、色々な点が対比的な構造となっている。オージュ公爵のパートは騎士道物語的な喜劇風で、現代のシドロランのパートは悲愁を感じさせる雰囲気が強く、その点でもメリハリがある。物語の最後でこの二人の人物が交わり、また離れていく部分はなんだかわからないが妙に感動的。あと、訳者にとりあえず拍手。2014/02/10
