内容説明
ロラン・バルトに「攻撃的なクノーの作品は、『文学』のおそるべき『成虫』を包み込んでいる」と言わしめた『地下鉄のザジ』。オカマバーで踊り子をしている大男ガブリエル伯父さんに、時にはお巡り、時には名探偵に姿を変えるペドロ、見境なく恋に落ちるムアック未亡人など、ユーモア溢れる登場人物たちと、破壊力あふれる言葉たちが作り出す、おかしな冒険小説。
著者等紹介
久保昭博[クボアキヒロ]
1973年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。パリ第三大学博士課程修了(文学博士)。現在、京都大学人文科学研究所助教。専攻、フランス文学、文学理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほりん
35
最初,少女ザジの罵詈雑言にびっくりしてしまった。口癖の「オケツぶー」にもゲンナリ。物語も不思議な感じで,ときどきどこにいるのかわからなくなる。自分の読解力不足かと気落ちして,解説をのぞいたら,「不安」「不確実」といった言葉が目に入った。そうか,それならば…と場面転換が入り乱れる芝居か映画を観ている気分で読んでみるとペースがつかめた。地下鉄に乗りたかったザジのパリ滞在は,ストのせいでままならないが,縦横無尽に走り回って波乱万丈のうちに幕を閉じる。夢か現か,嘘か真か,さまざまな物事が入り乱れ過ぎ去っていく。2015/07/07
藤月はな(灯れ松明の火)
28
「おケツ、ブー!」が口癖の女の子、ザジ。母親が不倫相手と密会する間にパリにいる放蕩息子の叔父、エンジェルに預けられた彼女の夢は地下鉄に乗ること。果たして言葉によって人々を罵倒し、引っ掻き回していく彼女は無事に地下鉄に乗ることができるのか!?「初めに言葉ありき」を煙に巻いて破壊するザジの汚い言葉の数々。だけどザジの言葉によって振り回される人々はネットワークなどのメディアに囲まれて現実を認識(曲解)して生きる私達自身でもあるのだ。後、ザジの夢の結末は如何にも 現実らしく、不条理だ。2016/06/17
メセニ
12
ザジの口癖「オケツぶー」が大変お気に入りなので、日常生活でも積極的に使っていきたいという気持ち。2016/02/10
もよ
11
「ザジ」がヒロインなのかと期待して読んでいたら完全に肩透かしを食らった。上滑りするプロットと妙に理屈っぽい登場人物が醸し出す不思議な世界。これがベストセラーになったとはフランス人恐るべし。2015/03/15
pyoko45
11
クノー、いいですね!軽やかで勢いのある文章のあちこちに、笑いや趣向や伏線や驚きがマイクロカプセルのように仕込まれていて、読むとぷちぷちぷちっとはじける感じが心地よいです。基本はドタバタなのですが、物語の勢いにつられて読み流していたところに、そっと伏線が張られていたり、「えっ」と思うようなカミングアウトが何気にさらっと流されていたりするので気が抜けません。なにはともあれ、話の展開のむちゃぶりと会話のバカバカしさを満喫しました。クノーコレクション、続刊が楽しみです。2011/10/14