内容説明
決して雨のふらない“ふるさとの都”では、圧倒的な権力を誇る市長ナボニードのもと、恒例の奇祭“聖グラングラン祭”が行われようとしていた。一方、三人の息子たちによって、父のある陰謀が明かされることとなる…。ジョイスの手法を応用したという、クノー中期の代表作。改訳決定版。
著者等紹介
渡邊一民[ワタナベカズタミ]
1932年、東京生まれ。立教大学名誉教授。専攻、近現代フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
10
<ふるさとの都>恒例の祝祭<聖グラングラン祭>は転換点を迎えていた。前代的な家父長の性質を体現し、三人の息子たちを、そしてまた都全体を統べる市長ナボニードの全盛期は、魚の生命にとりつかれた長男ピエールをはじめとする息子たちの造反にあい、脆くも崩れ去る。前市長は石と化し、秘宝<雲追い石>は失われ、好天は俄かにかき曇り、やまない雨が降りしきる。ジョイス的な言語遊戯、奇想きらめくエピソード、異なる形式の語りが相俟って、全篇これカーニヴァルの熱気ただよう異様でハイテンション、あまりに神話的な小説に仕上がっている。2011/10/29
めぐ
7
正直言って面白さが良く分かりませんでした。全く物語に入り込めなくて苦労しました。聖書のような、象徴に満ちた普遍的なお話なのは分かりますが、そして話も意味もある程度分かりますが…、小説として面白いんでしょうか?また時間がたったら読もうと思います。2017/04/19
pyoko45
6
水在?酸在?首をかしげる奇妙な言葉や「」内にト書きが入り混じる不思議な会話文、丸ごと詩のような文体の章もあったりする。なにせ年に一度の祭りだから言葉も酔っぱらって浮かれ気分なのですね。でも読んでいる方は醒めた素面で挑むわけだから、読むのに骨が折れるわけです。暴走する妄想、懸想する奇想。その喧噪のなかで、肝心の物語さえも霞んで見えてしまいます。まさに「字酔いす」であります。2011/11/18
兎乃
2
ソルボンヌ大学で文学と数学を学んだクノー。バタイユとの共著「ヘーゲルの弁証法の根底に関する批判」では、数学に関わる部分を加筆。そのバタイユが「神話的な並外れた小説」と驚嘆した 中期代表作。『柏と犬』の一節に出てくる「聖グラングラン祭」。マルセル・モース『贈与論』やフロイト『トーテムとタブー』を連想させる内容を含んだ本書。ポトラッチに関してはバタイユも書いているが、クノーは学術的な内容をきわめて卑近な日常生活レベルに置き直し、荒唐無稽さが際立つ仕組みをとっている。雲追い石、生贄、宗教の起源を解き明かす。2012/06/14
ぴゃっぴゃ
1
物語そのものに難解なところは決してないのだけど、言葉や文体にあまりにも技巧が凝らされていて読むのに体力が要った。現実から遊離して謎の都の<観光客>になった気分にさせられる。あと裏表の装丁がいい。美しい。2011/12/05
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