内容説明
すぐれた文学作品は、歴史的な流れと無関係には生まれない。『枕草子』と『源氏物語』という文学史に輝く作品を生み出した二人の女性、清少納言と紫式部には多くの共通点がある。ともに一条天皇の中宮の女房であったこと、受領の娘であり妻であったこと、漢学の教養を備えていたこと。彼女たちの作品は、また摂関期の政治情勢による制約を受けていた。和漢混淆の貴族社会のなかで才能を開花させた二人の女性が生きた時代を描いてみたい。
目次
和漢混淆の時代の女流文学
1 一条天皇とその後宮
2 女房たちの世界
3 受領の娘、受領の妻
4 女性の日記と男性の日記
5 歴史の流れのなかで
著者等紹介
丸山裕美子[マルヤマユミコ]
1961年生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)(東京大学)。専攻、日本古代史。現在、愛知県立大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白隠禅師ファン
15
女房たちの名前・職務・家格についてや、受領の娘の清少納言と受領の父・夫を持つ紫式部という視点から彼女等の作品に与えた影響、その意味などを考察するなど、女流文学が生まれた文化的背景を探る。これで880円は安すぎる。2025/05/02
新田新一
14
清少納言と紫式部が生きた時代を詳細に記述した歴史書です。華やかな宮廷生活の一面がよく伝わってきます。二人が仕えた中宮定子が父の死によって、宮廷で力を失っていく箇所では胸をつかれました。この時代は漢文と和文の両方が使われており、清少納言と紫式部はその両方の達意の使い手だったことを知りました。一番面白いと思ったのは、紫式部が父と共に越前国に行き、そこで宋の商人と会った可能性に触れられている部分です。著者はその経験が『源氏物語』に生かされているかもと述べています。歴史のロマンを感じました。2023/11/11
Ayako Moroi
1
博論執筆のために読んだ、新しいリブレット。人物伝というよりは、当時の女房集団の序列や呼称、『枕草子』『紫式部日記』と公卿日記の違いに重点が置かれている。参考文献も拙稿と重なっている。私見と異なる点があるとすれば、中宮三役の「宮の内侍」は、内裏の掌侍が出向しているものとみなしている点である。私見では、「宮の内侍」と、内裏兼任の掌侍は別人である。末尾にある「文学作品は歴史の流れと無関係には形成されない」の言葉は大いに賛成であり、私自身も、その視点で博論も仕上げたいと考えている。2016/05/13
marino
0
美人の貴族。魅力的なもののけ。著書も読みます。彼女たちに異常とはなにかといったら、穢い恋、変わらない景色と答えるのかな。
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