内容説明
フランス北西部の港町ル・アーヴルで、名誉負傷の軍人として情報部門で英国軍との連絡の任にあたっているベルナール・ルアモー。妻を悲劇的な事故で亡くした彼は、心に大きな空虚を抱いたまま、戦局をペシミスティックに見据えている。兄夫婦や町の人々と交流し、淡々と日々を送っていたが、ある日たまたま乗ったバスのなかで、二人のかわいい姉弟と出会い…。クノーの故郷を舞台に、地方都市特有の雰囲気を伝える珠玉の郊外文学。
著者等紹介
鈴木雅生[スズキマサオ]
1971年、東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。パリ第四大学博士(文学)。現在、学習院大学文学部准教授。専攻、フランス文学。主な訳書に、J・M・G・ル・クレジオ『地上の見知らぬ少年』(河出書房新社、2010、第十六回日仏翻訳文学賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かわうそ
27
ユーモア溢れる実験的な作風や言語遊戯といった著者のイメージとはかけ離れたシンプルで地味な作品だけど淡々と描かれる日常からラストの急展開まで過不足なくきっちり納まっている感じがして非常に好きです。2015/06/20
ぱせり
9
第一次世界大戦のさなかのパリ。漂う閉塞感。これは一種の長い休暇の物語だ。苦い休暇。主人公はいずれ前線に戻る。美しいものをみつけたとしても、大切なものをみつけたとしても、それはどこにもつながってはいない。抱きしめても抱きしめても、抱きれない。 2017/01/11
兎乃
3
クノーっぽくないけど、クノーなのだと感じる。好きな作品。2012/04/30
koala-n
2
レーモン・クノーといえば実験的な作風で知られているが、この本は著者にしては珍しく、非常にオーソドックスな長編(中編?)小説。訳者解説でも触れられているように、どこといって起伏のない、淡々とした話であるが、妙に心に残る。ざっくりいえば、第一次大戦中のフランスの地方都市を舞台にした、中年に差し掛かったインテリ男性の心と体の回復の物語であるが、タイトル通り、どこか寒さと暗さが作品を蔽っていて、ラストも希望を抱かせると同時に戦場へと舞い戻るわけだから、どうしても死の影がつきまとうものとなっている。苦い話だ。2013/11/14
兎乃
2
Raymond Queneau en 1939 –Comment un écrivain devient-il un écrivain?– http://sakuyauno.jugem.jp/?day=20120705 2012/07/08