水声文庫 マラルメの“書物”

清水 徹【著】

水声社（2011/10発売）

• サイズ B6判／ページ数 174p／高さ 20cm
• 商品コード 9784891768492
• NDC分類 951
• Cコード C0098

内容説明

自然主義的、リアリズム的文学観を根本的に刷新し、現代文学への途を切り開いた詩人が、その文学的出発から死の床に至るまで構想しつづけた未聞の“書物”とは何か？残されたメモ、断章、ノートを子細に検討し、“演劇”でもあり、“パフォーマンス”でもあるものとしての“書物”の夢へ肉薄する。

目次

マラルメの“書物”について（手紙をとおして見た“書物”；『ディヴァガシオン』における“書物”；遺稿の焼却；“書物”をめざす断章群　；現在時と状況性；終わりに）
マラルメ論拾遺（“虚”と“沈黙”を求めて；火曜会のこと；ふしぎな仲の愛し合う二人；メリー・ローランのこと；ヴァルヴァンの家）

著者等紹介

清水徹［シミズトオル］
１９３１年、東京に生まれる。東京大学文学部卒業。明治学院大学名誉教授。専攻、フランス文学（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[いやしの本棚]

書物についてのフェティッシュな拘りは、ジャン=リュック・ナンシー『思考の取引』とつながる部分があって興味深かったが、マラルメの言ってる事はかなり難しく、決して理解できたとは言えない。マラルメの計画した朗読会の「祭儀的なありよう」や「ページの可動性」、何より残された断章群、その「ばらばらの紙片」を読みときながら、ただ一冊の〈書物〉を想像することは、「万物を一つひとつ描きだすのではなく、そのあいだに存在するさまざまな関係を透視する夢」に何よりふさわしいと思えた。

2017/09/02

[パオー]

マラルメの入門書。所々難しかったけど、きっと恐ろしく難解なのであろうマラルメの思考を、理解しながらたどることができた気が。マラルメは「究極の書物」を追究すると知人らに宣言し、その実現のために生涯をかけて取り組んだが、果たせずに死んでしまった。そもそもそのような「絶対的な書物」なんて実現不可能なものだけど、マラルメは死の前年に『賽の一振り』を発表し、それはブランショによると、究極の書物の実現を予告するものであったとのこと。到達の可能性を秘めた到達不可能なものへの追究プロセスこそが本質だったということなのか。

2013/02/17

[カケル]

「世界は一冊の〈書物〉に至りつく」 こんな大口を叩く誇大妄想狂の本は読むしかないッショ、と昔玉砕したので脇道からこっそりと。

[ゴリラ爺]

西洋文学を多少なりとも知っていればマラルメの名は詩の根源に触れた偉大な文学者、詩人の中の詩人として記憶されているだろう。しかし本書を一読した限りでは、書簡の中で「ぼくのかんがえたさいきょうのしょもつ」への夢想を語るばかりで己に課した文学的使命を果たせなかった劣化版フローベールのような印象しか残らなかった。清水徹もあれこれ考えながら書いているが、マラルメの《書物》は「漠然とした夢想」の域を出ないとお手上げ状態で、この本を読んでもマラルメの《書物》の輪郭は一向に掴めなかった。

2022/09/10