内容説明
新ジャンル、メトロ詩とは?富士山は日本に存在しない?レーモン・クノー的「街路の読み方」とは?英語のthの発音は、フォアグラによって生まれた?作家/ウリピアン/数学者ルーボーが、山手線で試作/詩作/思索する、ディープな東京案内。
著者等紹介
ルーボー,ジャック[ルーボー,ジャック][Roubaud,Jacques]
1932年、フランスのローヌ県に生まれる。レーモン・クノー率いるウリポのメンバーで、作家であり、パリ第十大学で教鞭をとっていた数学者でもある
田中淳一[タナカジュンイチ]
1941年、北京に生まれる。慶應義塾大学名誉教授。専攻、フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
5
大学の先生の友人である詩人の作品なんだと。山手線の一駅を、松尾芭蕉の一日と重ね合わせて、575のリズムを意識した詩を作ったりする。多色刷り、改行、番号などを使うことで何層もの物語を同時並行で進める。東京の極々日常的な風景を、数学者であり詩人であるフランス人の見方から語り直す。何の事件も起こらない、最大の観光となるとTOTO展示場見学。日常性の真っ只中に落ち込むことで、新たな視点を獲得する。目と瞳、山手線と皇居の関係とは。2012/04/23
rinakko
5
面白くて可笑しい…! 日本のゼリーとイギリス製のそれとの比較から、英語の「th」の正しい発音のためにゼリーが発明されたという説が導き出される…。万葉の詩人に絡めて富士山の非存在を説く富士山考。TOTO訪問のあらましとその感動。丸ノ内線の車内では、てんとう虫とのつかの間の出会いに心を寄せる(か、可愛い…)。公園と庭をめぐる長歌二首。…などなどなど。一見掴みどころがなく、どこへ流れ着くのかさっぱりわからない思惟そのものも魅力だが、随所に見られる拘り方が面白い。2011/08/29
きゅー
4
タイトルの東京案内という言葉に騙される。確かに東京が舞台だけど、そこは私の知っている東京ではないみたいだ。山手線に乗りながら、一駅ごとに詩の一句を書き留めるメトロ詩なる創作を始めるなど、さすがウリポのメンバーだ。この作品自体もフランス語の原文に、初歩的な英語、和製英語、普通の英語などが入り乱れ、それぞれ文字の色が変えてあるという凝りよう。文学における数学性と規則性、異言語間での言葉遊び、そこにソネット、和歌、俳句を混ぜるなどかなりアクロバティック。ところで著者近影が缶コーヒーBOSSのあの人にそっくり。2011/10/04
すけきよ
4
現代日本の風物を因数分解。、本書の一番の特徴は、いくつもの段落分けとカラフルな文字によるレイアウト。それにより、本筋からどんどん脱線していくのが目に見えてわかり、山手線に乗っているはずなのに、迷宮に彷徨っているかのよう。 2011/08/01
gu
3
とても気安くて、でもなんだかわからず扱いに困る本。バルトの「表徴の帝国」を連想すべきなのかと思ったが、終始真顔なあちらとはボケの種類が少し異なるか。文章にこれだけいろんなものを持ち込めるのかとうれしくなる。2015/05/19