内容説明
生命ある絵を追い求め、10年を費やし「カトリーヌ」を描いた老画家フレンホーフェル。長らく秘密にされていた、その絵の本当の姿が明らかになったとき、画家は…。ピカソやセザンヌが主人公に自分を重ね合わせたという表題作のほか、「絵画」と「狂気」が交錯する6篇を収録。
著者等紹介
私市保彦[キサイチヤスヒコ]
1933年、東京に生まれる。東京大学卒業、同大学大学院修士課程修了。武蔵大学名誉教授。専攻、フランス文学
芳川泰久[ヨシカワヤスヒサ]
1951年、埼玉県に生まれる。早稲田大学卒業、同大学大学院後期博士課程修了。現在、早稲田大学文学学術院教授。専攻、フランス文学
澤田肇[サワダハジメ]
1952年、北海道に生まれる。上智大学卒業、パリ第三新ソルボンヌ大学大学院博士課程修了(文学博士)。現在、上智大学文学部教授。専攻、フランス文学
片桐祐[カタギリユウ]
1951年、新潟県に生まれる。早稲田大学卒業、青山学院大学大学院博士課程中退。現在、青山学院大学他非常勤講師。専攻、十九世紀ロマン派
奥田恭士[オクダヤスシ]
1954年、長崎県に生まれる。東京外国語大学卒業、青山学院大学大学院博士課程単位取得退学。現在、兵庫県立大学環境人間学部教授。専攻、十九世紀フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
137
『鞠打つ猫の店』麗しく心も美しい娘に必要だったのは、他人を判断する見識と強い心。泣き、求めても、助からぬ。姉のような堅実でも面白味のない生活よりよほどいいじゃないか『財布』最後の刺繍ところ、読み間違えたかと思った。すごく好き。しかし、結婚後は誰もわからない…。『ピエール・グラスー』つまり、天才には計算が出来ないということ。程々の才能が1番辻褄が合う。凡才にも天才にも、それぞれに見合った幸福と不幸。『海辺の悲劇』放蕩息子の帰還の話が本筋だろうが、金持ちの貧乏人への掻き立てられたにわか善意に吐き気がする。2018/03/08
NAO
71
『財布』『鞠打つ猫の店』は、どちらも画家が窓辺の美女に一目惚れする話だが、その結末は正反対という、鏡合わせのような話。『財布』の画家イポリットも、アデライドも、裕福とはとても言えないが、ちょっと貧しいぐらいが心が豊かで幸せなのかもしれない、と思う。バルザックにしては、シニカルなところのない優しい話だ。『知られざる傑作』と『ピエール・グラスー』も、天才の狂気と、無能な画家の執拗さという、これまた鏡合わせのようになった話。バルザックは、一癖も二癖もある芸術家たちを描くのが本当に好きだったようだ。2019/02/27
H2A
13
『財布』『ピエール・グラスー』は未読だった。どちらも風刺が効いているが読後感はほのぼのとしているしうまい。他は既読だが、『知られざる傑作』はあたためて読んで、短くてもずしりと重い内容。ゾラ『制作』なんかも影響を受けていたのかもしれない。収録作のチョイスがよいのでバルザック初心者にもいいかも。2012/06/09
ラウリスタ~
13
岩波文庫の方はまだ字が大きくならないので敬遠していたので、よい装丁の本が出て良かった。知られざる傑作他「鞠打つ猫の店」含む6編。それぞれが一大長編になりうるものの短編集という印象。最後の「柘榴屋敷」の過剰なまでの風景描写は19世紀前半だということを強く印象づけた。この時代の風景描写の長さはちょっと異常。現代の読者でちゃんと読んでいる人がどれだけいるんだろうと気になる。バルザックと比べるとゾラって随分現代的だということがよく分かる。2011/04/09
OKKO (o▽n)v 終活中
8
図書館 ◆ガッコの課題「バルザック『知られざる傑作』」のために、「解説」熟読、ノート ◆仮に本書を新訳版と位置づけよう。水野亮氏の、古くはあるけれどけっして難解でなく読み物として真っ当な翻訳がスタンダードのようだが、この私市保彦氏らの訳もより現代的で躍動感アリで嬉しい ◆バルザックの一つの柱である芸術の狂気系作品集、しかも新訳ということで、「解説」以外も「楽しく」「面白く」読めた(つまり私は、この時代の小説なんてエンタメとしては楽しくもないし面白くもないから自分には関係ない、と考えているのだ……今でも) 2017/07/30