内容説明
たんなる心理劇、風俗劇とみなされがちな、コルネイユ、ラシーヌ、そしてとりわけモリエールなどの十七世紀のフランス古典主義演劇を、中世的エピステーメーの解体と、『近代』の創出のドラマとの関連において捉え直し、古典主義演劇のイメージを一新する気鋭のフランス文学者=演劇学者の野心作。
目次
第1章 「視覚」の劇―モリエール『タルチュフ』と『ナヴァールのドン・ガルシー』の関係について
第2章 仮面の劇―モリエール『人間嫌い』について
第3章 二つの仮面―メタシアターとしてのモリエール『ドン・ジュアン』
第4章 視覚の眩惑者および/あるいは統御者としての王―モリエール『アンフィトリオン』について
第5章 「善いぺてん師」?―モリエール『守銭奴』における「演劇的知」
第6章 仮面のプシコマキア―モリエール『気で病む男』と懐疑主義思想
第7章 レトリックと仮面―レトリック論争とモリエール『人間嫌い』
第8章 劇場都市と仮面たち―コルネイユの初期喜劇におけるパリ
第9章 はじめに、噂=ノイズがあった…―ラシーヌ『フェードル』における登場人物の「感覚の不確実さ」
結論 劇場としての世界―十七世紀西欧における演劇と思想の交流