内容説明
確信成立の条件を明確化するE.フッサールの現象学の立場からすると、キツネ憑きや悪魔憑きなど、民俗社会でみられる憑依は、憑くもの(憑依者)を媒介とする、被憑依者、祈祷師、コミュニティの人たちの共同的‐間主観的信憑(共同信憑)として記述することができる。被憑依者は、自己身体の背後(後ろ)の身体空間に憑依意識性を感じながらも、ある機会に憑依者(何ものか)が外部から内部へ侵入することで、被憑依者は人格変換(継時性二重人格)を起こす。ところが、近代化・都市化の進展にともない、共同信憑としての憑依は、個人単位の信憑(個人信憑)としての“変身”に遷移してきた。憑依の本質は変身であるが、現在の“変身”は、自己に自己が憑く、他者不在のニセの憑依にすぎない。とはいえ、憑依という知恵は、ポストモダンセラピーの中で外在化の技法や外在化する会話としていわばメタ憑依として活かされている。本書は、憑依の民俗学的アプローチをとらずに、専ら、憑依の形式的構造や憑依の身体空間の構造を記述することを目的としている。
目次
1 憑依と現象学―「確信=信憑」成立条件の解明(知覚の現象学;言葉の現象学;共同信憑としての憑依)
2 憑依の現象学(憑依とは何か;憑依の関係性;憑依する他者;憑依の共同信憑の構造)
3 憑依の精神病理学(症状としての憑依;憑依の身体空間;憑依意識性と実体的意識性;気配過敏と背後)
4 憑依から変身へ―共同信憑と個人信憑
5 メタ憑依の活用としての外在化の技法―不登校事例と問題行動事例を通して(憑依の応用としての外在化の技法;外在化する会話;祈祷療法)



