内容説明
歴史上初めて手洗い・消毒の重要性を訴え、接触感染による産褥熱の死から若い母親たちを守った感染防護の父・ゼンメルワイス―。その悲劇の生涯と研究のあり方を疫学的観点から検証し、事実に基づく科学的視点の重要性を説く!
目次
第1部 ゼンメルワイスの闘い(感染症と手洗い;産褥熱の悲劇;ゼンメルワイスの闘い)
第2部 手洗いの疫学(グローバル化時代の手洗い;「疫学」とは何か;疫学の新たな展開―ゼンメルワイスから学ぶもの)
著者等紹介
玉城英彦[タマシロヒデヒコ]
1948年、沖縄県今帰仁村古宇利島生まれ。テキサス大学公衆衛生大学院博士課程(疫学)修了(PhD)、旧国立公衆衛生院研究課程(公衆衛生学)修了(DrPH)。世界保健機関(WHO)本部伝染病部・世界エイズ対策本部、米国ポートランド州立大学国際招聘教授、北海道大学大学院医学研究科予防医学講座国際保健医学分野教授などを経て、北海道大学名誉教授、北海道大学国際連携機構特任教授、台北医学大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kenitirokikuti
9
2008年は国際衛生年、そしてその年から10月15日が世界手洗いの日と定められた▲19世紀ウィーン総合病院には当時世界最大の産科病棟があった(前世紀のマリア・テレサ女王の働きかけによる)。19世紀になり、病理解剖が導入されると、産科病棟にて産褥熱による死亡が目立って増加した。パスツールやコッホが細菌学を成立される直前、ゼンメルワイスは手洗い法を見出す。ゼンメル…の不幸は精神を病んだこと(当時の産婦人科医によくあった梅毒の可能性あり)▲手指洗い、やっぱり大事なのは爪の垢。2020/05/04
かおりん
3
10月15日が世界手洗いの日らしいので毎年10月はゼンメルワイスのことを考えることにしようと思う。感染制御の父、母親たちの救い主だそうである。非専門家にも読まれることを考えたであろう著者の文章はとても読みやすく、悲劇の科学者の物語としてさらりと読んでしまうこともできるが、本気で読んだら歯応えしっかり。2022/10/20
四色しおり
2
19世紀半ば、まだ細菌が発見されていない時代にはゼンメルワイスは統計的手法を用いて、汚染された手で医師が患者に触れることで病気を伝染させていることを証明した。これを解決する方法として彼は徹底的な手洗いを提案したが権威ある教授たちはこれを拒否し、最終的に彼は病院から追い出されることになった。疫学的手法を一人で確立させた手腕、保守的業界でイノベーションを達成しようとする意欲、そして社会的アプローチに欠けたことによる敗北と彼から学ぶことは多大である。疫学の統計による推理という手法も探偵のようで興味がそそられた。2018/10/04