内容説明
中世ヨーロッパの人びとは何を恐れ何を尊いと感じ、どのような人生を送ったのか。本書は、いまだに多くの謎を残すヨーロッパ世界のさまざまな局面を、中世にまでさかのぼり、そこに生きた人びとの宇宙観の変化や心の動きに焦点をあてながら考察したものである。200点余の絵画や彫刻を素材にくりひろげられる生きた中世のコスモス。NHK市民大学のテキストを全面的に改訂した決定版!
目次
1 謎にみちた中世
2 二つの宇宙
3 中世建築の怪物たち
4 中世都市の時間と空間
5 死生観の転換
6 富める者と貧しき者
7 若き騎士の遍歴
8 手仕事と学問
9 子どもの発見
10 二つの宇宙の狭間で
11 中世の音の世界
12 絵画に見る中世社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ノリピー
2
中世建築に見られるモンスターの造形は一体どこにそのルーツがあるのだろうか。その問題提起からこの本は始まる。学術書や教科書ではけっして分かり得ない中世のリアルな姿を当時の風習や都市の暮らしに着目して見出そうとする試みはやがて必然的にボスの絵画へと帰結する。 冒頭の問題提起に対する答えは一言では表せないが、本書はそれをこの一冊の書物を通して提示してくれる。まったく稀有で有意義な書物に出会ったものだ。2018/03/24
罪夏至
1
中世ヨーロッパ人の世界観について詳しく書かれている。教会に設置されている怪物の意味や、市場や家がもっていたアジールという機能。騎士や学生、子どもといった存在の位置づけや、農村の暮らし、城門の開閉、非差別民のついてなど多岐にわたって解説している。2014/01/05
R-R
1
なんとなく手に取ってみたのだが、これが非常に面白い。『暗黒時代』という言葉だけで片付けるのはいかがなものかと常々思っていた私の中で、確かに中世ヨーロッパが新たな姿で「甦え」った。学術系の本は短くとも読むのが苦痛なのだが、300ページの長さを感じさせない、「むしろもっと」と思えるような知的好奇心を刺激される一冊だった。2011/05/30
しんかい32
0
西洋中世文化のいろいろな側面を紹介した本。建築物や絵画にあらわれる怪物たち、奇妙な世界地図、大宇宙と小宇宙の衝突など、今の視点からすると非常に幻想的な世界観のなかで生きていた人々の話。ダイジェスト的な面があるため物足りないところもあるが面白かった。ただ被差別民が差別される理由についての話は多少うさんくさく感じた。この説現在ではどうとらえられてるんだろう。2011/12/15
うさこ
0
ゼミの先生から借りてきた本。既に絶版らしいのだが、中世ヨーロッパに対する阿部謹也氏の主張がギュッと詰まった本2008/12/09