出版社内容情報
《内容》 現代は情報の時代である。IT革命の合い言葉の下に次々と新しい技術が発達するお陰で、現代人は情報を追っかける一方で情報に追いまくられている。ITのお陰でたしかに便利にはなったが、これでよいのだろうかとふと心配になることがある。一方、我々医療の世界にもIT革命は容赦なく侵入してきている。日々の医療を支える機構、システムを効率よく動かすにはITは大変有用であり必要不可欠といってもよい。しかし、医学の勉学のためには相変わらず成書の占める役割は少なくない。もう10年もすれば、IT革命の中に取り込まれて成書なぞ存在しなくなるかもしれないが‥‥。
さて、成書は役に立ってよく読まれなければ作った意味がない。ただでさえ日々の情報量が多い上に、最近の若い人々は文章を読むのが苦手という現状を考慮して本書が企画された。記述はできる限り短く、ほとんど箇条書きのスタイルをとることにした。IT革命の現状に合わせたつもりであるが、これで成書と呼べるかは少々自信がない。しかし、必要な情報は十分に盛り込んであるし、読者にとって読みやすく憶え易いという利点はあるだろう。要は体裁にこだわらず、分り易く使い易いことに一点集中するという発想に従った。文献も必要最小限に絞り、重要なものについては内容を簡単に紹介してある。読者はこの短い抄録から、精読する原著を選別してもらえばよい。内容の配置も重要度別の大項目、中項目、小項目、最小項目に分けてあり、いくつかのコラムが本文で語りつくせない領域をカバーしている。
対象とした疾患は大腸癌。最近はやりの疾患であり、それだけに同類の成書も数えきれないほどあるので、競争が厳しいということである。余程の工夫をこらさなければ本が売れない分野でもある。そこで色々と新味を出そうと工夫した結果、このような体裁のユニークな本になった。著者はほとんどが若手の現役の方々であり疫学から解剖、発癌、一次予防、二次予防、病理、診断、治療、術後サベイランスと全ての領域が網羅してある。記述形態も厳密なチェックの結果、日本の成書にしては珍しくほぼ統一することができた。若手編集者の努力の甲斐あって、期待通りの本が出来上がったと感じている。著者の方々の協力に感謝申し上げたい。
《目次》
第1章 Overview
1.初診の患者を診る心構え
2.疫学
3.大腸癌の発癌予防
4.大腸癌の発生と胆汁酸
5.遺伝性大腸癌
6.大腸癌の診断・治療と遺伝子解析
7.ポリープと癌
8.発育進展・前癌病変,形態変化
第2章 スクリーニング(検診)
1.便潜血検査
2.内視鏡
第3章 発生と解剖
1.組織発生
2.解 剖
第IV章 分 類
第V章 病 理
1.進行癌
2.大腸m癌,sm癌診断の実際と問題点
3.炎症性腸疾患と癌
4.癌と鑑別が必要なその他の特殊な腫瘍
第VI章 診 断
1.内視鏡検査
(1)早期癌
(2)進行癌
(3)特殊な腫瘍(遺伝性大腸癌、潰瘍性大腸炎の癌化、悪性リンパ腫)
コラム:内視鏡検査の限界―偽陰性(見落とし)例について 光島 徹
2.X線検査
(1)早期癌
(2)進行癌
(3)特殊な腫瘍
コラム:X線検査の限界
3.特殊な検査
(1)超音波細径プローブ,EUS
コラム:EUSの限界 趙 栄済
(2)CT,3D-CT
(3)拡大内視鏡
コラム:深達度診断における拡大内視鏡の限界
(4)MRI
(5)PET(陽電子断層撮影
(6)腫瘍マーカー
(7)直腸鏡検査
第VII章 治 療
1.結腸癌
(1)治療法選択の原則
(2)内視鏡的治療
a.基本的手技
b.治療後のフォローアップ
(3)腹腔鏡手術
(4)外科手術
コラム:Sentinel nodeと微小転移診断
2.直腸癌
(1)治療法選択の原則
(2)外科的治療
a.局所切除術,TEM
b.進行直腸癌に対する手術術式
c.直腸癌に対する側方郭清とTME
d.自律神経温存手術
(3)放射線療法
(4)化学療法
a.術前・術後補助療法
b.Tumor dormancy therapy
c.感受性試験
(5)その他の治療法概説
3.転移性大腸癌
第VIII章 治療後のフォロー
1.外科治療後の経過観察スケジュールの原則
2.排尿機能,男性性機能,排便機能障害