出版社内容情報
加藤周一を加藤周一たらしめるもの。それは、一に、普遍性を求めてやまぬ精神の運動、二に、洋の東西やジャンルを問わぬ知識の博さ、三に、文章の切れ味である。彼が遺した膨大な文章――そこから短い推薦文と追悼文だけを拾い集めたこの本は、彼の精神の運動、知識の博さ、そして文章の切れ味を、あますところなく見せてくれる。論はあらゆる形の詩歌、哲学、小説、美術、音楽に及ぶ。世に知られた人物にも、知られなかった人物にも及ぶ。同時に、漢文調の警句とフランス風のアフォリズムとがないまじり、日本語がかくも豊かに鋭くありうることを思い起こさせてくれる。加藤周一こそ、称えられ、悼まれる人物であったと、今、改めて思う。
水村美苗(小説家) 装丁 桂川潤
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感想・レビュー
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belier
3
久しぶりの加藤周一。最近はあまり読んでないが、むかしは影響を受けすぎたぐらいだった。この企画は、加藤を熟知する鷲巣力氏の手によるものだけに、加藤の魅力が引き出されている。本当に加藤は短文とほめるのが上手。「悼むことば」の最初が林芙美子だったのは驚いた。彼の『日本文学史序説』では林に触れていないからだ。51年に林が亡くなった時点では、少なくとも『放浪記』は評価していたのか。ならばやはり読むべきか。他にもこの本に名前が出ていて、読んでいない書き手の何人かは、読まねばという気になった。やはり影響される。2025/01/10