内容説明
『古事記』の成立は和銅五年であったとして誤りないと、著者は信じている。『古事記』という古事世界が確立したことによって、「国史」としての『日本書紀』も、「地方誌」としての『風土記』も、その書物としての性格付けを明確に持ちえた。『日本書紀』が正史としての性格を明確に持ち始めたことにより、ウタは歴史より離れる宿命を負うことになる。記紀の書成の時代が、『万葉集』の時代と重なってくるのは、そうした時代相を示しているということができよう。
目次
第1章 「神語」の構成とその意義(記伝承「襲に立つ月」の物語;「尾張風俗歌」の伝承について)
第2章 「久米歌」による伝承とその意義(「古久米舞譜」遡源;前妻と後妻との争い)
第3章 記紀伝承のカタリとウタ(出雲建が佩ける太刀;燃ゆる火の火中に立ちて)
第4章 記紀伝承のカタリとウタの変容(記紀伝承の分水嶺;「神語」と「擬神語体」とのあいだ)
第5章 閉ざされた桑梓の世界『古事記』(記紀伝承の形成と編纂過程における凍結;『古事記』より『日本書紀』への継承と変容;記紀伝承と天武・持統朝;記紀の旧辞伝承と豊明節会における神事儀礼)
著者等紹介
内藤磐[ナイトウイワオ]
1966年、早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程修了。早稲田大学教員(高等学院教諭・講師)。早稲田大学国文学会評議員。奈良県万葉文化振興財団万葉古代学研究所共同研究員
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