内容説明
「服装の乱れは心の乱れ」という標語は「服装が乱れている生徒は心も乱れているから注意しよう」ということであったはずなのに、現実の職員室では「生徒の服装を一定の枠にはめる」ことそれ自体が目的と化していることが珍しくない。このような生徒指導のあり方は、職員室に共有されるある種の「常識」が基盤となっているのではないか。それが本書の主題である。この問題を社会心理学の視点から明らかにした。
目次
第1章 「職員室の社会心理」序説
第2章 太い脚、隠せばもっと恥ずかしい―生徒間の世間体
第3章 「ベンキョウしろ」はホンキにするな―保護者の世間体
第4章 自立させない進路指導
第5章 おかしくなるのはすべて同根
第6章 明るく楽しい教師生活のために―「異質なものの共存」を中村正直に学ぶ
第7章 「世間の目」と「しきり行動」
第8章 職員室の社会心理学者は考える
第9章 生徒指導についての教師の態度
第10章 指導、指導は最悪の指導
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りりん
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本書の特徴として、教師側の生徒指導に対するホンネと生徒側の生徒指導に対するホンネが記されている。複数の立場の異なる著者によるメリットだ。一読した私の感想として、「個性を伸ばす教育」を謳いながら、現実は教育者の理想とする生徒像の型に生徒皆を当てはめようとする教育方針の大きな矛盾点を痛切に感じた。それは校則や方針を変容させることによる失敗を恐れるためであり、恐れる理由は内外からの批判つまり評判の悪化がそこにはあるからだ。既存の方針の失敗は叱責されにくいが、新しい取り組みは問責される。これでは改善は生まれない。2013/03/17