内容説明
田中正造の谷中村は、国策の銅生産のために、鉱毒に苦しみ一人残らず村を追われた。ふるさとに生き土を耕し作物を作って食べる暮らしは、ぷつんととだえた。田中正造の「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」のことばをどう引き継いでいけばいいのだろうか。
目次
福島から転校して、遊水地に立つ
生きものが萌え出す野焼き
遊水地に、むかし、村があった
鉱毒で、花と虫と鳥と魚が消えた
草木が生えない裸山の足尾銅山跡
谷中村の鉱毒は七〇年続いた
国のために少数の国民はあとまわしになる
父に聞いてわかってきた福島原発
「棒出しは東京に洪水があふれないようにしたのです」
最後まで遊水地に残った一六戸の農民〔ほか〕
著者等紹介
一色悦子[イッシキエツコ]
福島県郡山市出身。京都女子大学短大部文科卒業。「受験連盟」で毎日児童小説賞受賞。日本児童文学者協会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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河野孝之
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宇都宮の随想舎より2013年10月1日付で刊行。 福島県双葉町から両親と別れて祖父母のいる茨城県古河市にいる母方の祖父母のところへ縁故疎開してきた中学生の耕太は、この場所が足尾銅山の鉱毒事件で荒れ果てた土地になった場所で、田中正造という人が国会議員を投げ打ってまで国と戦い続けたことを知る。そして調べれば調べるほど「天災+人災」、「国家のために地方が犠牲になる」などあまりにも福島第一原発事故と似通った合わせ鏡のような構図があることを知っていく。 やや努力して読むことを強いる本ではあるが、必読の書。 2013/11/27