内容説明
ホテルに就職2日目で事故死してしまった幽霊のサラ、ホテルの前で物乞いするホームレスのエルス、鬱状態で起き上がれない、ホテルの元受付係のリサ、ホテルの記事を書く新聞記者のペニー、死んだサラの妹クレア―5人の女性の人生が、イギリスの名もない街のホテルでほんの一瞬交差する。生きること、死ぬこと、そして愛すべき人生のディテールを繊細かつ大胆に描く新世紀の英国小説。
著者等紹介
スミス,アリ[スミス,アリ][Smith,Ali]
1962年スコットランド生まれ。ケンブリッジ大学博士課程でモダニズムを研究後教鞭をとっていたが、処女短編集Free Love and Other Storiesがサルティア文学新人賞を受賞し作家活動を始める。イギリス、ケンブリッジ在住
丸洋子[マルヨウコ]
1959年生まれ。慶応義塾大学文学部社会学科卒業。東京都在住
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感想・レビュー
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ゆのん
52
イギリスにあるホテルを軸に社会背景の全く異なる5人の女性の人生が交差する。交差といってもほんのちょっと。このほんのちょっとの交差が読んでいて気持ち良い。5人の女性に共通しているのは自己崩壊の危機に陥っていること。各章1人ずつ一人称で語られるのだが様々な要因で『言葉』の欠落や迷い込むという現象が見られる。物語自体が暗く切実な内容となっているが淡々と語られるので読み易い。生きるのは大変だが皆頑張っているんだ。そして自分がどんなに辛くても世の中はいつも通りの朝を迎える。3932019/12/25
kasim
28
事故で転落死した若い従業員、道に陣取るホームレス、病気療養中で自宅に籠るフロント係。ホテルものではあるけど、通常の予想を裏切る登場人物たち。各章の主役はすべて女性。死者の語る章はシニカルで人を食っていて不思議なユーモアを湛え、ミュリエル・スパークへのオマージュというよりほぼパスティーシュ。その妹の意識の流れの章は『ユリシーズ』最終章。ここはちょっとやりすぎかな。ホテルの提灯記事を書く新聞記者の章がよかった。思い上がって無知なのに、自分では理解あるいい人のつもり。責めるより自分の反省材料にしよう。2023/07/31
tona
4
世界中どこに行っても同じサービスを提供してくれるグローバルホテルを中心に事故死したサラ含む5人の女性たちの物語が展開される。失語気味の彼女たちの意識は、過去と未来を行ったり来たり。独特の文体ですが、原文に忠実に再現されており、非常に工夫されたいい翻訳だと思います。2014/03/26
necoko19
2
★★★ 自分を失いそうな女性たちが交差する。言葉と時間。難しかった…。最後の「現在」の章がとても印象的。2021/05/18
治野
2
サラの亡霊が最後に放つ詩が印象的だった。思わずノートに書き留める。2021/03/15