内容説明
同性同士の親密な関係は、古代にあって哲学的・精神的な啓蒙への道を拓くひとつの文化とみなされ、英雄伝説や現実生活の友情として記録に留められた。この人類の一属性は、有史以来いかなる社会認識の許で形づくられてきたのか…9ヶ国14人の研究者たちが歴史・芸術・民俗などにおける広範な例を挙げながら、二百数十点の図版とともに“普遍的”とされてきた異性愛中心の世界観の相対化を試みる。
目次
ゲイとレズビアンの歴史
ギリシアとローマにおける同性愛
中世
近代初期のヨーロッパ
啓蒙と革命の時代の男性同性愛
ヨーロッパ近代初期のレズビアンなど
アメリカ大陸
同性愛の時代
第二次大戦以後の公的領域とゲイの戦略
現代世界における“女を愛する女”
同性愛の発見―異文化間の比較とセキュシュアリティー
中東と北アフリカの同性愛
アジアにおける欲望と同性間のまじわり
ゲイの世界
著者等紹介
オールドリッチ,ロバート[オールドリッチ,ロバート][Aldrich,Robert]
シドニー大学教授(ヨーロッパ史)
田中英史[タナカヒデブミ]
1938年生まれ。東京教育大学大学院博士課程満期退学。現在、大妻女子大学文学部教授
田口孝夫[タグチタカオ]
1947年生まれ。東京教育大学大学院修士課程修了。現在、大妻女子大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナナ
1
西洋と東洋、ゲイとヘテロ、と二分したくなる頭に棲みついた価値観を揺さぶられる論考集。日本人の、つまり自分の、西洋コンプレックスを詳らかにされたり、l-g-b-tのパワーバランスや、ゲイとビアン、男と女の可視化度合いを浮き彫りにされる。タブーと聞けばタブーを敷き、同性婚解禁と聞けば賛同と讃え、昔からここは、海の向こうにめっぽう弱い。「世界は変わったが、異性愛のイデオロギーが支配的という状況は変わっておらず、ゲイの場は寝室やバーやメディアに限られているのである」p.363 見えないもの、に目を向け続けたい。2016/11/01