内容説明
近代国家において展開・普及されてきた衛生制度や衛生規範、それは博愛という非政治的戦略を通して、住民全体を―時に生産者として時に兵士として―国家に貢献しうる国民へと陶冶・管理する強力な政治技術でもあった―学校衛生をはじめ、近代日本における「衛生」の概念・制度・実践の歴史を詳細に検証・考察するとともに、多くの聞き取りによって、必ずしも政策意図とは合致しない住民側の受容の様相を浮き彫りにした、充実の歴史社会学研究。
目次
序章 課題と方法
第1章 近代医事衛生制度の成立と衛生思想
第2章 学校口腔衛生の確立と歯科学の専門職化
第3章 衛生経験の聞き取り
第4章 新中間層家族における母親の衛生戦略
補遺 「京城府」の衛生経験
第5章 身体化される/されない衛生実践
終章 近代日本の衛生経験
著者等紹介
宝月理恵[ホウゲツリエ]
1976年大阪府生まれ。2008年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(社会科学)。現在、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科リサーチフェロー。専門は社会学(健康と病いの社会学、医療の歴史社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
2
フーコー的衛生史研究はこれまで言説に注目し、どのような権力作用が働いてきたのかについては、語れてていた。しかし、そうした言説からは、衛生の実践における受容の在り方については見えてこない。本研究の照準は明治~昭和初期であるが、著者は、この頃の「生きられた衛生経験」をした人々にインタヴューし、オーラルヒストリーを衛生史に補完することで、先行研究が陥った権力の全体性を批判している。衛生史そのものを概括しつつ、貴重な調査の実施、その結果を社会学的に説明している。博士論文が元となっているだけあって、堅実な研究。2020/10/17
mfumimoto
0
衛生規範の受容にも様々あるのだね。近代の衛生史が概観できて非常に参考になった。だが、社会学の概念の網羅には、少々うんざり。2012/02/09