内容説明
夢二の多面的で浪漫ゆたかな作品の裡に、自由な個性表現としての主観性、ジャンルを超えて羽ばたく総合性、脱日常と自然への親和感など、やまと絵以来の日本の伝統・「文人」の面影を見出し、正統な美術史的位置づけを試みると共に、今求められる新たな芸術的個性として、現代における「文人」の復活を期す。
目次
第1部 竹久夢二と『伊勢物語』(夢二の時代の絵と詩歌―はじめに;やまと絵と『伊勢物語』―やまと絵屏風の時代;夢二の装幀・装画―吉井勇著『新訳絵入伊勢物語』;絵を中心にした総合性―夢二本『絵入歌集』『山へよする』;山と自画像―東洋的自我の意識)
第2部 日本の文人考(忘れられた文人の概念―はじめに;美術史の内の文人と文人画―近世への視点;古典にみる文人の系譜―王朝時代からの精神風土;近代文学の視点―漱石、鴎外、『白樺』派など;復権する近代の文人―露風、有三、そして太宰;線描表現の進取と自主性―北斎以降の風景と夢二;文人精神のゆくえ―まとめ)