内容説明
二元論、善悪の観念、死後の世界、終末論、救世主、天使などの概念の淵源はどこか?10年前、日本語で書かれた初めての通史が完成!今や既に品切れて、今回の全面改稿となりました!最新の研究成果です。日本のゾロアスター教研究の詳細な現状が巻末に!
目次
序論
プロローグ 原始アーリア人の民族移動
第1章 教祖ザラスシュトラの啓示から原始教団の発展(~紀元前四世紀)
第2章 第一次暗黒時代(紀元前四~紀元後三世紀)―ヘレニズム時代からアルシャク王朝時代まで
第3章 サーサーン王朝ペルシア帝国での国家宗教としての発展(三~一〇世紀)
第4章 第二次暗黒時代(一一~一六世紀)―ムスリム支配下での改宗と脱出
第5章 インドでの大財閥としての発展(一六世紀~現代)
エピローグ 日本におけるゾロアスター教徒とゾロアスター教研究
著者等紹介
青木健[アオキタケシ]
1972年新潟県生まれ。東京大学文学部卒。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、静岡文化芸術大学・文化芸術研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さえきかずひこ
16
教祖没後推定1500年を経て教典が文字化されたゾロアスター教の約3500年の歴史を膨大な文献と先行研究から整理したもの。10世紀頃のメソポタミア平原にはユダヤ教、東西シリア教会、グノーシス主義諸派、マーニー教など多様なセム系宗教が混在しており、ゾロアスター教はイスラームに押されて衰退していくのだが、そのダイナミックな動きが素描され心躍った。また、その頃いまのイランのあたりからインド西岸に移り住んだゾロアスター教徒たちが英領インドの近代化の波に乗り、経済的成功を得て財閥化した点も興味深く読んだ。労作です!!2020/05/19
bapaksejahtera
6
本書はアーリア人(印欧語族一般の俗称とは異なる)に信仰されてきた標記宗教の歴史と現状を述べる。宗祖生没年さえ700年の幅を以て推定されている上、アーリア人は隣するセム人と異なり文字文化が遅れたため教義史料に乏しい。よって広くイラン人等アーリア人一般の宗教観と特定の教義とが混淆して周囲の文字民族に受け取られた憾みがある。その光輝は神官政権サーサーン朝ペルシアにあるとされ、ここでその教義一端が明らかとなる。本書ではそのイスラム政権との角逐叙述が面白い。神官階級の末裔、インドのターター財閥については目を開かれる2021/03/21
ジュンジュン
5
現在13万人の信徒を持つゾロアスター教の興亡を、三つの興隆期とその間の暗黒期にわけて詳述。マイナーな宗教の歴史も著者の筆力にかかれば、分かりやすく面白い。最後の復興期にあたるインド・ゾロアスター教団の財閥化の過程は、日本の三井・三菱などのそれに似ていてもっと知りたくなった。近年「ボヘミアンラプソディ」で有名なあのフレディマーキュリーもインド・ゾロアスター教徒出身だったとは驚き。観てないけど…。2020/02/07
ikeikeikea
3
ザラスシュトラからインドの神官財閥として成功するまでのゾロアスター教の通史。ゾロアスター教を揺るぎない二元論的宗教であり、ユダヤ教やキリスト教に多大な影響を与えた宗教とする思い込みから自由にしてくれる1冊となっている。もっともゾロアスター教ズルヴァーン主義を含むゾロアスター教の教義の変遷については同著者の「古代オリエントの宗教」「ゾロアスター教」の方が詳しいので、そちらも合わせて読むべきかもしれない。2019/04/29
y
0
ゾロアスター教については、中高の世界史で何となく聞いたことあるなーという知識レベルでした。 成立時期の文献が少ないので、不明点は多いのですが、世界三大宗教とのからみや、言語の成立過程、西アジア地域の歴史的動向、そして現代インドなよ財閥など、目から鱗の内容で、久しぶりに読んでいて、数々の驚きがありました。 手放しに面白い本だと思いました。2019/06/05