出版社内容情報
『史学雑誌』2009年8月 第118編第8号「新刊紹介」より (評者:山本妙子)
リュシアン・フェーヴルは,マルク・ブロックとともに『社会経済史年報(アナール)』を創刊し,わが国でもアナール派の祖として知られている。本書は,そのフェーヴルがコレージュ・ド・フランスで1944-45年に行った講義の自筆ノートを彼の死後活字化し,刊行したものの邦訳である。本書の講義は,28課にわたりヨーロッパという観念を探求したもので,フェーヴルによるヨーロッパの形成過程に関する多数の講義ノートのなかでも最も完成度が高く,本人も刊行を意図して加筆し続けていたという。・・・中略・・・本書はヨーロッパ統合の動きに注目が集まる昨今,読者にあらためてヨーロッパとは何かとを問い直す機会を与えてくれる。訳者は『歴史のための闘い』(平凡社,1995年)等のフェーヴルの著作の翻訳も手がける長谷川輝夫氏である。本書の最大の特徴は講義ノートならではのフェーヴルの雄弁な語り口と折々に挿入される隠喩である。難解といわれる彼の文章を読みやすい日本語に移した訳者の労に敬意を表したい。・・・略・・・広い読者層に向けた邦訳で彼の講義を聴講できることは喜ばしい。
『歴史学研究』2010年1月 No.862 書評より (評者:平 正人)
「ヨーロッパとは何か」・・・社会が大きな転換期をむかえるたびに、歴史家はこの問題に立ち返ってきた。
・・・略・・・ここに紹介するフランス人歴史家リュシアン・フェーヴルもまた,第二次大戦直後,「ヨーロッパとは何か」という問題に立ち返った歴史家である・・・略・・・本書は,コレージュ・ド・フランスでの連続講義(1944-45年)のためにフェーヴルが準備した手書きノートを復元したものである。彼はなぜ2000年にもおよぶ壮大なヨーロッパの歴史を講義のテーマに選んだのか(あるいは,選ばなければならなかったのか)。
・・・略・・・本書の頁を1枚1枚めくるごとにフェーヴルの声が直に伝わってくる。・・・略・・・いま,社会は大きな転換期をむかえようとしている。われわれは再びこの問題に立ち返るときなのかもしれない。本書を通じて,歴史家フェーヴルの熱い思いが人々の心に広く響きわたることを期待したい。「ヨーロッパとは何か」。かくも古くて新しい問題である。
目次
概論―まずはヨーロッパを定義する
いかにしてヨーロッパは命名されたか
ヨーロッパ、ヘレニズム、地中海
ヨーロッパ、ローマ帝国と地中海
帝国が滅びると、ヨーロッパが現れる
カロリング朝ヨーロッパ―ヨーロッパの予示
ヨーロッパ、その萌芽―カロリング帝国
ヨーロッパとキリスト教世界
ヨーロッパと封建制
ヨーロッパと経済復興
ヨーロッパと経済復興―金
コミーヌのテクスト―西方が東方に対する劣等感を拭い去る
十六世紀とヨーロッパ
シュリのテクスト―世界制覇
十八世紀のヨーロッパ
革命―ヨーロッパという幻想は、いかにして国民にぶつかり、沈没するか
もうひとつの暗礁、民族
結論―段階をひとつ飛ばすべきか
著者等紹介
長谷川輝夫[ハセガワテルオ]
1941年千葉県に生まれる。一橋大学社会学部卒業。パリ・ソルボンヌ大学第三シクル博士課程修了。現在、上智大学文学部史学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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